なぜ人は自分の考えと同じ意見ばかり集めるのか


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「やっぱり、私が思っていたとおりだった」

インターネットで調べものをしていて、そう感じることはありませんか。

ある健康法がよいと思えば、その効果を紹介する記事が目に入る。苦手な人がいれば、その人のよくないところばかり気になる。ニュースを読んでいても、自分と同じ意見には納得し、反対意見には「この人は何も分かっていない」と感じてしまう。

この背景にあるのが、「確証バイアス」と呼ばれる認知の偏りです。

人は情報を集めるとき、正しい答えを探すだけでなく、自分の考えを確かめ、安心したいという動機にも影響されます。

しかも、この偏りは知識の少ない人だけに起こるものではありません。専門知識を持つ人も、医師も、自分自身の判断を見直す必要があります。

今回は、同じ意見ばかりを集めてしまう理由と、そこから少し距離を取る方法について、心理学や神経科学の研究から考えていきます。

確証バイアスとは?

確証バイアスとは、すでに持っている考えや仮説に合う情報を重視し、それと矛盾する情報を軽く扱いやすい傾向を指します。

たとえば、「あの人は自分を嫌っている」と思っているとします。

その人が挨拶を返さなかった日は、「やっぱり嫌われている」と感じる。一方、親切にしてくれた日は、「仕事だから仕方なくやっているだけ」と考える。

こうなると、どちらの出来事も「嫌われている」という結論に回収されてしまいます。

ここには、情報の選び方と、情報の解釈の仕方という、少なくとも二つの問題があります。

自分に合う記事や発信者を選ぶことは、研究では「選択的接触」と呼ばれます。そして、反対の情報にも触れているのに、その内容を自分に都合よく評価することもあります。

Hartらのメタ解析では、人は平均的に、自分の態度や信念を支持する情報を好む傾向を示しました。ただし、これは誰もが反対意見を完全に避けるという意味ではなく、目的や状況によって変わります。

つまり、「いろいろ読んでいるから、自分は偏っていない」とは限らないのです。

人は「正しくありたい」と同時に、「間違っていたと思いたくない」

調べものには、異なる二つの目的が混ざっています。

一つは、「できるだけ正確なことを知りたい」という目的です。

もう一つは、「自分の考えや選択は正しかったと思いたい」という目的です。

たとえば、高額な買い物をした直後に、その商品の欠点を詳しく調べるのは、あまり気が進まないかもしれません。反対に、「買ってよかった」と書かれたレビューなら、つい読みたくなります。

自分が費やしたお金や時間、努力が大きいほど、間違いを認めることには痛みが伴います。

このような心の動きを理解するうえで役立つのが、「認知的不協和」という考え方です。自分の信念と、それに矛盾する事実との間に不快な食い違いがあると、人はその食い違いを小さくしようとします。

もちろん、事実に合わせて考えを修正することもできます。しかし、「その情報のほうがおかしい」と判断しても、不快感は小さくなります。

また、自分が望む結論にたどり着くよう、理由の探し方や証拠の評価が偏ることを「動機づけられた推論」と呼びます。本人には、結論ありきで考えているという自覚がないこともあります。

「きちんと考えた結果」と「信じたいことを守るために、きちんと理由を考えた結果」は、自分の内側からは見分けにくいのです。

反対意見が「自分自身の否定」に聞こえることがある

意見には、単なる知識以上のものが結びついている場合があります。

「自分は人を見る目がある」
「この治療法を選んでよかった」
「自分が所属する集団は、正しいことをしている」

こうした考えに反対されると、個別の主張だけでなく、自分の能力や価値観まで否定されたように感じることがあります。

Hartらの解析でも、その信念が本人の価値観とどの程度関係しているかによって、情報の選び方が変わることが示されています。

日常場面に置き換えるなら、意見を変えることが「情報の更新」では済まず、「これまでの自分をどう受け止めるか」という問題になるわけです。

この視点から考えると、議論がうまく進まない理由も見えてきます。

一方は研究結果について話しているつもりでも、もう一方は、自分の人生や大切な仲間を守ろうとしているかもしれません。

その場合、証拠を追加するだけでは、話がかみ合わないことがあります。

自信が強いと、新しい証拠の処理まで変わる?

確証バイアスについては、脳の情報処理に踏み込んだ研究もあります。

Rollwageらは2020年、画面上の点の動きを判断する知覚課題と、脳磁図(MEG)を用いた実験を報告しました。

この研究の興味深い点は、最初の判断の正答率を大きく変えずに、自信の程度を操作したことです。

その結果、自信が高い条件では、最初の判断を支持する追加情報の取り込みが強まり、判断に反する情報の取り込みが弱まりました。行動だけでなく、判断後の証拠の蓄積に関係する神経活動にも、その偏りが認められたのです。

ただし、これは知覚課題での結果です。政治的信念や治療への考え方が、すべて同じ仕組みで説明できるわけではありません。

それでも、「自信があるから正確に情報を評価できる」とは限らない、という点は示唆的です。

また、ここでいう「提示された証拠をどう処理するか」と、「そもそもどの情報を選んで読むか」は別の過程です。自信が高いほど、あらゆる場面で同じ方向に偏ると単純化することもできません。

SNSで同じ意見が並ぶと、それが「世間の常識」に見えてくる

SNSでは、自分がフォローする相手や、反応した投稿によって、目にする情報が変わります。

似た考えの人を選んでフォローすれば、タイムラインにも似た意見が増えます。同じ主張が何度も現れると、自分の周囲では広く共有されている考えのように見えてきます。

ただし、ここでも話を単純にしすぎないことが大切です。

2023年にNatureに掲載された研究では、米国のFacebook利用者23,377人を対象に、自分と政治的立場が近い情報源からのコンテンツを約3分の1減らす実験が行われました。

その結果、異なる立場の情報源に触れる機会は増えましたが、政治的な分極化など、事前に設定された態度指標には測定可能な変化が認められませんでした。

これは「SNSは考え方に影響しない」という証明ではありません。特定の国、選挙、期間、介入方法での結果です。

しかし、「同じ意見ばかり見るから偏る。反対意見を増やせば元に戻る」というほど、人の信念は単純ではないことが分かります。

情報の種類を変えることと、その情報を受け止め直すことの間には、もう一段階あるのです。

「訂正すると、かえって信じ込む」は本当か?

確証バイアスの話では、「間違いを指摘すると、相手はかえって元の考えを強く信じる」と説明されることがあります。

これは「バックファイア効果」と呼ばれます。

ただし、誰にでも頻繁に起こる一般法則として扱うのは適切ではありません。

WoodとPorterは、1万人を超える参加者を含む五つの実験で、52の争点について事実の訂正を検討しました。その結果は、事実の訂正が広く逆効果になるという見方を支持しませんでした。

ここで区別したいのは、「事実についての認識」と「好き嫌いや支持する立場」です。

ある説明が誤りだったと理解しても、それだけで支持する人物や集団まで変わるとは限りません。

たとえば、ある人物についての噂が誤りだと分かっても、その人物を好きになるとは限らないでしょう。

訂正の後に相手の態度が変わらないからといって、「事実を伝えても無駄だった」とは言い切れないのです。

医師も例外ではない ― 診断を守るための情報収集になっていないか

医療では、限られた時間の中で仮説を立て、必要な情報を集めます。この能力は診療に欠かせません。

一方、最初に「この病気だろう」と考えた後、その診断を支持する所見ばかりを拾ってしまえば、別の可能性を見落とします。

たとえば、不眠や動悸を不安症状と考えたとき、心理的なストレスについては詳しく尋ねるのに、身体疾患や薬剤の影響を十分に確認しなければ、問診自体が最初の仮説に沿って狭くなる可能性があります。

関連する研究として、Mamedeらは内科研修医36人を対象に、直前に経験した症例が、その後の診断に与える影響を調べました。最近見た病気を思い出しやすいことで判断が偏る「利用可能性バイアス」が診断を誤らせ、症例所見を構造的に再検討することで、その影響を軽減できる条件が示されました。

利用可能性バイアスと確証バイアスは、同じものではありません。

ただ、どちらも「今、頭の中にある説明」が、その後の判断に影響するという点で、臨床上の接点があります。

診断を支持する所見に加えて、「この診断では説明しにくい所見はないか」と確認することには意味があります。

専門知識は判断を助けますが、自分の仮説を点検する手順も必要なのです。

偏りを減らすには、「公平になろう」より具体的な問いを

確証バイアスを知ったからといって、すぐに偏りがなくなるわけではありません。

役立つ工夫の一つは、「自分と反対の結論が正しいとしたら、どんな理由があるだろう」と考えることです。

Lordらの実験では、単に公平で偏りのない判断をするよう求めるよりも、反対の可能性を具体的に考えるよう促したほうが、判断の偏りを減らす効果が認められました。

日常生活では、次のような問いに置き換えられます。

「何が分かったら、考えを変えるか」を先に決める

どんな結果が出ても同じ結論になるなら、その考えは確かめることが難しくなっています。

「このデータが確認できたら見直す」
「この説明では扱えない事実が出てきたら、別の可能性を考える」

このように、考えを変える条件を言葉にしてみます。

賛成意見にも、反対意見にも、同じ質問をする

反対意見だけに「研究の規模は?」「利益相反は?」「例外は?」と厳しく問い、自分に都合のよい意見はそのまま受け入れていないでしょうか。

情報を評価する基準をそろえることは、自分の偏りに気づく手がかりになります。

記事の本数より、根拠の出どころを見る

同じ主張の記事を十本読んでも、すべてが一つの研究や同じ体験談を引用しているなら、独立した根拠が十個あるわけではありません。

「何人が言っているか」とともに、「何を根拠に言っているか」を確認してみましょう。

反対意見を、無条件に正しいと思う必要はない

偏りを避けることは、すべての意見を同じ重さで扱うことではありません。

質の高い研究と、根拠のない断言を半分ずつ信じれば、中立になるわけでもありません。

目指すのは、自分と同じ意見かどうかにかかわらず、根拠の質に応じて判断することです。

最後に

自分と同じ意見を見て安心するのは、特別におかしなことではありません。

ただ、安心できる情報だけを集めていると、調べるほど詳しくなったつもりで、考えを見直す機会を失うことがあります。

気をつけたいのは、「自分には確証バイアスがある」と知った後も、その知識を相手の批判にばかり使ってしまうことです。

「この人は都合のよい情報しか見ていない」と感じたときには、自分にも同じ問いを向けてみる。

そして、「絶対に正しい」と感じる考えについてこそ、何が分かれば修正できるのかを考えてみる。

考えを変えられる余地を残すことは、自信をなくすことではありません。新しい情報を、自分の判断に役立てるための姿勢なのです。

参考文献・資料

  1. Hart W, et al. Feeling validated versus being correct: A meta-analysis of selective exposure to information. Psychological Bulletin. 2009;135(4):555–588.
    https://doi.org/10.1037/a0015701
  2. Kunda Z. The case for motivated reasoning. Psychological Bulletin. 1990;108(3):480–498.
    https://doi.org/10.1037/0033-2909.108.3.480
  3. Rollwage M, et al. Confidence drives a neural confirmation bias. Nature Communications. 2020;11:2634.
    https://doi.org/10.1038/s41467-020-16278-6
  4. Nyhan B, et al. Like-minded sources on Facebook are prevalent but not polarizing. Nature. 2023;620:137–144.
    https://doi.org/10.1038/s41586-023-06297-w
  5. Wood T, Porter E. The elusive backfire effect: Mass attitudes’ steadfast factual adherence. Political Behavior. 2019;41:135–163.
    https://doi.org/10.1007/s11109-018-9443-y
  6. Mamede S, et al. Effect of availability bias and reflective reasoning on diagnostic accuracy among internal medicine residents. JAMA. 2010;304(11):1198–1203.
    https://doi.org/10.1001/jama.2010.1276
  7. Lord CG, Lepper MR, Preston E. Considering the opposite: A corrective strategy for social judgment. Journal of Personality and Social Psychology. 1984;47(6):1231–1243.
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/6527215/

情報確認日:2026年10月23日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)