全般性不安障害


全般性不安障害

札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。


「仕事で失敗するのではないか」「家族が病気になったらどうしよう」「この先、生活していけるだろうか」。

こうした心配は誰にでもあります。しかし、一つの心配が解決しても次の心配が浮かび、考えるのをやめようとしても止められず、睡眠や日常生活に支障が出ている場合には、全般性不安障害の可能性があります。

この記事では、全般性不安障害の特徴や診断、治療について、研究報告も交えながら解説します。

全般性不安障害の概要

本疾患を一行で表すと、「日常生活のさまざまなことを過度に心配し、その心配を自分ではコントロールしにくくなる疾患」です。

英語ではGeneralized Anxiety Disorderと呼ばれ、GADと略されます。「全般不安症」という名称も使われています。

心配の対象は、仕事、健康、お金、家族、将来、日々の予定など多岐にわたります。特定の一つの対象だけを恐れるというより、生活のさまざまな領域に不安が広がることが特徴です。

例えば、仕事の心配が一段落したと思ったら、今度は家族の健康が気になり、それが落ち着くと将来のお金が心配になる、といった具合です。

また、「考えすぎだとは分かっているのに、考えずにはいられない」という方も少なくありません。本人も心配の大きさに気づいているからといって、簡単に止められるわけではありません。

「心配性」との違い

心配性かどうかだけで診断することはありません。判断するうえで大切なのは、心配の強さや持続期間、コントロールの難しさ、生活への影響です。

心配のために眠れない、確認に時間を取られて仕事が進まない、休日も緊張が抜けず休めないといった状態は、治療を検討する理由になります。

「昔からこういう性格だから」と考えていても、現在の苦痛まで我慢する必要はありません。

身体の症状が目立つこともある

全般性不安障害は、頭の中の心配だけでなく、身体にも症状が現れます。

肩や首のこり、頭痛、胃の不快感、疲れやすさ、動悸、不眠などがあり、本人は不安より身体症状を主な問題として感じていることもあります。

ただし、これらの症状があるからといって、すべて不安が原因とは限りません。必要に応じて身体疾患の確認も行います。

全般性不安障害の診断

DSM-5系の診断基準では、仕事や学業などのさまざまな出来事について、過剰な不安や心配が、少なくとも6か月にわたって、そうでない日より多く生じていることが中心となります。

加えて、その心配をコントロールすることが難しく、成人では以下の6症状のうち3つ以上を伴うことが診断の目安です。

症状具体例
落ち着かなさ・緊張感常に気が張っている、そわそわして休めない
疲れやすさ心配や緊張が続き、消耗してしまう
集中困難考えがまとまらない、心配事で頭がいっぱいになる
易刺激性些細なことでいら立つ、余裕がなくなる
筋肉の緊張肩や首がこる、身体に力が入っている
睡眠の問題寝つけない、途中で目が覚める、眠っても休まらない

さらに、症状によって強い苦痛や生活上の支障があり、薬物・身体疾患・別の精神疾患によって、より適切に説明されないことを確認します。なお、小児では必要な随伴症状数が異なります。

「6か月」という診断基準は、6か月間受診せずに待つという意味ではありません。 不眠や仕事への支障が出ている場合は、期間が短くても相談して構いません。

ほかの疾患との違い

不安は多くの疾患に伴うため、「不安が強い」という情報だけでは診断できません。

疾患・状態不安や心配の特徴
全般性不安障害仕事、健康、家族、将来など、幅広い事柄への心配が続く
パニック障害パニック発作や、その再発への恐れが中心になる
社交不安障害他人から注目されたり、否定的に評価されたりすることを恐れる
強迫症望まない考えが繰り返し浮かび、確認や洗浄などの行為につながる
病気不安症重い病気にかかっている、またはかかるという心配が中心になる
うつ病気分の落ち込みや興味の低下に、不安や悲観的な考えが伴う

これらは必ずしも一つだけとは限らず、併存することもあります。また、甲状腺機能亢進症などの身体疾患や、カフェイン、薬剤、アルコール・薬物の影響も確認します。

全般性不安障害の治療

治療の中心は、認知行動療法などの心理療法と薬物療法です。

症状の強さ、生活への影響、併存疾患、本人の希望などを踏まえて選び、必要に応じて組み合わせます。

治療の目標は、「一切心配しない人になること」ではありません。心配に占められる時間を減らし、眠る、働く、休むといった生活を取り戻すことです。

認知行動療法

認知行動療法(CBT)は、全般性不安障害に対して研究が進んでいる心理療法です。

「もっと前向きに考えましょう」と励ますだけの治療ではありません。心配を長引かせる考え方や行動を整理し、具体的に取り組んでいきます。

例えば、心配していることを「今、対応できる問題」と「今は答えの出ない仮定の問題」に分けることがあります。

「明日の提出物が終わっていない」であれば、作業を小分けにして取り組むことができます。一方、「いつか大きな失敗をしたらどうしよう」という心配は、考え続けても確実な答えが出ません。こうした違いに気づき、問題解決と心配の繰り返しを区別していきます。

また、安心するための確認や検索が繰り返されている場合には、その行動が不安をどう変化させているかを振り返り、必要以上の確認を少しずつ減らす練習などを行います。

研究紹介:心理療法の効果はどこまで分かっているのか

Papolaらの研究では、成人の全般性不安障害に対する65件のランダム化比較試験、計5,048人のデータが検討されています。

認知行動療法、第三世代の認知行動療法、リラクセーション療法は、通常のケアよりも短期的な症状改善に有効でした。さらに、研究の質や治療終了後の経過を考慮した解析では、認知行動療法を支持する結果が得られています。

この結果は、認知行動療法を有力な治療選択肢とする根拠になります。ただし、ほかの心理療法に効果がないという意味ではなく、長期的な比較にはまだ研究の不足があります。

薬物療法

海外の診療ガイドラインでは、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が主要な選択肢です。

これらは抗うつ薬に分類されますが、うつ病を伴わない不安症にも効果があります。

一方、海外で有効性が示されていることと、日本でその疾患に対して承認されていることは別です。薬剤ごとの適応を確認して治療を選ぶ必要があります。

日本での承認状況について

2026年3月23日、SNRIのベンラファキシン徐放製剤(イフェクサーSR)が、日本で「全般不安症」の適応を取得しました。

国内の第3相試験では、8週間の治療による不安症状の改善について、プラセボに対する優越性が示されています。ただし、すべての患者さんに同じように効くわけではなく、副作用も含めた個別の判断が必要です。

研究紹介:薬の効果は単純な順位で決められない

Sleeらが2019年に発表したネットワークメタ解析では、89件の試験、計25,441人を対象に、さまざまな薬剤の有効性と治療の続けやすさが比較されています。

ベンラファキシン、デュロキセチン、エスシタロプラムなどについて、不安症状に対する有効性が示されました。

ただし、異なる試験を組み合わせた比較には限界があります。効果の大きさだけでなく、副作用、併存疾患、これまでの治療歴を含めて考える必要があり、研究上の順位をそのまま個人の処方順位に置き換えることはできません。

治療開始時の注意点

SSRIやSNRIは、服用直後から不安を止める薬ではありません。効果が現れるまでには通常数週間かかり、その間に吐き気、不眠、不安感の一時的な増加などが生じることがあります。

少量から開始するなど、症状や副作用を見ながら調整していきます。強い焦燥感、じっとしていられない感じ、急な気分の変化などがあれば、次回の予約を待たずに主治医へ相談してください。

また、抗うつ薬の開始時や増量時には、自傷・自殺に関連する考えや行動の変化にも注意が必要です。特に若年者では慎重な観察が求められます。

症状が落ち着いた後も、再発を防ぐため一定期間治療を続けることがあります。薬を急にやめると離脱症状が出る場合があるため、減量・中止は主治医と相談しながら進めます。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、比較的速やかに不安を軽減する作用があり、強い不安に短期間対応する際などに使われることがあります。

一方、眠気、注意力の低下、依存、離脱症状などの問題があるため、漫然と長期使用することは避け、必要性を定期的に見直します。NICEのガイドラインでも、全般性不安障害では危機的状況での短期間の使用を除き、通常の治療としては勧めていません。

すでに継続して服用している方は、自己判断で急に中止しないでください。

改善が十分でない場合

薬の効果が不十分な場合には、すぐに薬を増やすだけでなく、診断、服用期間、用量、副作用、併存するうつ病や睡眠の問題などを見直します。

そのうえで、薬剤の変更や認知行動療法の追加などを検討します。

難治性うつ病で使われる増強療法が、そのまま全般性不安障害にも有効とは限りません。抗精神病薬などの追加は、根拠と副作用の両方を検討する必要があり、一般的な初期治療として行うものではありません。

全般性不安障害のその他の補足事項

生活習慣の調整も治療を支える

睡眠不足やカフェインの取りすぎは、不安や動悸を強めることがあります。コーヒーだけでなく、エナジードリンクや一部の市販薬・サプリメントにも注意が必要です。

起床時刻を整える、無理のない運動を取り入れる、休息を確保することも役立ちます。ただし、生活習慣だけで改善しないからといって、本人の努力不足ではありません。症状に応じて心理療法や薬物療法を組み合わせます。

周囲の方に知っておいていただきたいこと

「気にしすぎ」「まだ起きていないことを考えても仕方がない」と言われても、本人は簡単には心配を止められません。

まずは、心配が続くことで疲れ切っていることを理解することが大切です。そのうえで、答えの出ない心配を一緒に延々と検討するより、今できることを整理し、必要な受診や治療を支える関わりが役立ちます。

早めに相談していただきたい状態

不安で眠れない、仕事や家事が手につかない、飲酒や薬で何とかやり過ごしている場合は、早めにご相談ください。

全般性不安障害には、うつ病やアルコールの問題などが併存することがあります。「消えてしまいたい」「生きているのがつらい」という気持ちも、診察で遠慮なく伝えてください。

自分を傷つけそうな切迫した状態では、一人にならず、救急医療につながることを優先してください。

心配の内容が日常的なことであっても、それによって生活が圧迫されていれば治療の対象になります。「この程度で受診してよいのだろうか」と考えている方も、ご相談いただければと思います。

参考文献・資料

  1. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision(DSM-5-TR). 2022.
  2. NICE. Generalised anxiety disorder and panic disorder in adults: management. Clinical guideline CG113.
  3. Papola D, et al. Psychotherapies for Generalized Anxiety Disorder in Adults: A Systematic Review and Network Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials. JAMA Psychiatry. 2024;81(3):250–259. doi:10.1001/jamapsychiatry.2023.3971. ※2024年訂正反映後の内容を参照。
  4. Slee A, et al. Pharmacological treatments for generalised anxiety disorder: a systematic review and network meta-analysis. Lancet. 2019;393(10173):768–777. doi:10.1016/S0140-6736(18)31793-8.
  5. National Institute of Mental Health. Generalized Anxiety Disorder: What You Need to Know. Revised 2025.
  6. PMDA. イフェクサーSRカプセル37.5mg/75mg 電子添文、2026年3月改訂。
  7. ヴィアトリス製薬合同会社. 「イフェクサーSRカプセル」全般不安症の適応追加の承認を取得. 2026年3月23日.

※薬剤の承認状況は2026年10月16日時点で確認しています。