持続性抑うつ障害(気分変調症)


札幌市の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。


「何年も気分が晴れない」「仕事には行けているけれど、毎日を楽しめない」「昔からこうなので、自分の性格だと思っていた」。

このような状態が続いている場合、持続性抑うつ障害が関係していることがあります。

気分の落ち込みが長く続くと、不調が当たり前になり、本人も周囲も病気として気づきにくくなります。しかし、長年続いているからといって、改善を諦める必要はありません。

この記事では、持続性抑うつ障害の特徴や診断、治療について、研究報告も交えながら解説します。

持続性抑うつ障害の概要

持続性抑うつ障害は、気分の落ち込みが長期間続き、生活や対人関係などに影響する疾患です。英語ではPersistent Depressive Disorderと呼ばれ、PDDと略されます。

「気分変調症」「気分変調性障害」という名称で知られていますが、厳密には、現在の持続性抑うつ障害と従来の気分変調症は範囲が完全に同じではありません。

DSM-5では、従来の気分変調症と慢性の大うつ病性障害をまとめる形で、持続性抑うつ障害という診断が設けられました。そのため、比較的軽い抑うつが長く続く場合だけでなく、強い抑うつ症状が持続する場合も含まれます。

DSM-5-TRでは、両者が同じものだと誤解されないよう、英語の診断名に添えられていた「dysthymia」という括弧書きが削除されています。「気分変調症だから軽い病気」と一律には考えられません。

「昔からの性格」と感じられることがある

長く抑うつ状態が続いている方は、「自分はもともと暗い」「何をしても楽しめない人間なのだ」と捉えていることがあります。

特に、若い頃から症状がある場合には、調子のよい自分を思い出しにくく、病気と性格の区別がつきにくくなります。

診療では、悲観的な考えがあるかどうかだけでなく、睡眠、食欲、疲労、集中力、生活上の負担などを含めて確認します。「性格の問題」と結論づける前に、治療できる不調が隠れていないかを考えることが大切です。

仕事や家事ができていても、相談の対象になる

学校や仕事に通えているからといって、治療が不要とは限りません。

例えば、勤務中は何とか頑張れていても、帰宅後は動けない、休日は寝て過ごす、身近な人と関わる余裕がない、といった形で負担が現れることがあります。

診察では、できていることに加えて、それを続けるためにどれほど無理をしているかも確認します。

持続性抑うつ障害の診断

DSM-5系の診断基準では、成人の場合、一日の大部分にわたる抑うつ気分が、そうでない日よりも多く、少なくとも2年間続くことが中心となります。

加えて、抑うつ気分がある間に、次の6項目のうち2つ以上を伴うことが診断の目安です。

症状日常生活での現れ方の例
食欲の低下、または過食食べる気が起きない、気分を紛らわせるために食べすぎる
不眠、または過眠寝つけない、途中で目が覚める、長時間眠ってしまう
気力の低下、疲れやすさ何をするにもエネルギーが必要で、疲れが抜けない
自尊心の低下自分には価値がないと感じる、自信を持てない
集中困難、決断の難しさ作業が進まない、小さな選択にも時間がかかる
絶望感この先もよくならない、将来に希望がないと感じる

この2年間に、中心となる症状がない期間が一度に2か月を超えて続いていないことや、症状による明らかな苦痛・生活上の支障があることなども確認します。

小児・青年では、抑うつ気分の代わりにいら立ちが目立つことがあり、期間の基準は少なくとも1年間です。これらは診断基準の要約であり、項目数だけで自己診断できるものではありません。

「2年間」という基準は、受診まで2年間待つという意味ではありません。 期間が短くても、つらさや生活への影響があれば相談してください。

うつ病との違い

持続性抑うつ障害は、主に症状の長さや経過に注目した診断です。一方、うつ病の診断では、一定の期間にどのような症状が、どの程度まとまって現れているかを確認します。

両者は単純に「軽いうつ病」と「重いうつ病」に分けられるものではありません。長く続く抑うつ状態の途中で症状が大きく悪化したり、大うつ病エピソードの基準を満たす状態が持続したりすることもあります。

ほかの疾患や身体の状態も確認する

落ち込みが続いていても、その原因や治療方針は一つではありません。

特に確認したいのは、過去の躁状態・軽躁状態です。「あまり眠らなくても平気だった」「普段より活動的で話し続けた」「浪費や無謀な行動が増えた」といった時期がある場合には、双極症の可能性を検討します。

また、甲状腺機能低下症などの身体疾患、薬剤や飲酒の影響、ほかの精神疾患によって症状が説明されないかも確認します。診断では、現在の落ち込みだけでなく、それまでの経過を振り返ることが重要です。

持続性抑うつ障害の治療

治療では、心理療法、薬物療法、生活環境への働きかけを、症状や本人の希望に合わせて検討します。

慢性的な抑うつでは、落ち込みに加えて、活動量の低下、孤立、対人関係の負担などが互いに影響し、不調が続きやすくなることがあります。そのため、気分の変化だけでなく、日常生活の回復も治療の目標にします。

心理療法

認知行動療法では、抑うつを長引かせる考え方や行動を整理し、変えられる部分に少しずつ取り組みます。

例えば、「どうせ失敗する」と考えて人との関わりや活動を避けると、達成感や楽しさを得る機会が減り、さらに気分が落ち込むことがあります。

このような場合には、無理のない活動を計画したり、予想していた結果と実際の結果を振り返ったりします。単に「前向きに考えるように」と求める治療ではありません。

英国NICEのガイドラインでも、慢性の抑うつ症状に対する認知行動療法が治療選択肢に位置づけられています。

研究紹介:慢性の抑うつに特化した心理療法

慢性の抑うつに対して開発された心理療法に、CBASP(認知行動分析システム精神療法)があります。対人場面を具体的に振り返り、自分の行動とその結果の関係に気づくことなどを重視します。

Schrammらが2017年に発表したランダム化比較試験では、抗うつ薬を服用していない、若い時期に発症した慢性抑うつの成人268人を対象に、CBASPと支持的精神療法を比較しました。

20週間後の抑うつ症状は、平均するとCBASP群でより改善していました。ただし、群間の効果量は0.31で、効果の差は大きいものではありませんでした。

慢性の抑うつにも構造化された心理療法が役立つことを示す研究ですが、対象者や治療条件が限られており、すべての方に同じ結果が当てはまるわけではありません。

薬物療法

慢性の抑うつ症状に対しても、抗うつ薬が治療選択肢になります。SSRIやSNRIなどについて有効性を支持する研究があり、症状、副作用、併存疾患、過去の治療歴などを踏まえて選択します。

一方、慢性の抑うつにはさまざまな状態が含まれ、研究にも限りがあります。診断名だけで薬を決めたり、長引いていることを理由に薬を増やし続けたりするのではなく、効果と負担を確認しながら調整することが大切です。

抗うつ薬は、通常、効果を判断するまでに数週間を要します。開始直後や増量時には、吐き気、不眠、落ち着かなさなどが現れることがあります。

急に焦燥感が強くなった、眠らなくても活動できるようになった、自分を傷つけたい気持ちが増した場合には、早めに処方医へ連絡してください。

また、急な中断によって、めまい、吐き気、不安などの中止後症状が起こることがあります。減量や中止は、主治医と相談しながら進めます。

心理療法と薬物療法の併用

心理療法と薬物療法のどちらか一方で十分な改善が得られない場合などには、併用を検討します。

Kellerらが2000年に発表した研究では、慢性の大うつ病性障害の成人681人を、抗うつ薬ネファゾドン、CBASP、両者の併用に割り付け、12週間比較しました。併用群では、それぞれの単独治療群より高い治療反応が認められました。

この研究は、薬物療法と心理療法を組み合わせる意義を示しています。ただし、用いられた薬剤や対象者は限定されており、あらゆる抗うつ薬と心理療法の組み合わせに、同じ程度の効果が保証されるわけではありません。

改善が十分でない場合

症状が長引く場合には、治療方法を見直すとともに、診断や生活環境を再確認します。

薬の量や服用期間は十分か、副作用で継続しにくくなっていないか、双極症や身体疾患を見落としていないか、睡眠や飲酒、仕事・家庭の負担が回復を妨げていないか、といった点を整理します。

必要に応じて、薬の変更、心理療法の追加、専門的な治療を行う医療機関への紹介などを検討します。十分な治療をしても改善しない状態と、治療の調整がまだ十分でない状態を区別することが大切です。

持続性抑うつ障害のその他の補足事項

回復は、気分以外の変化にも現れる

治療の経過を見る際には、気分に加えて、生活の具体的な変化を確認すると役立ちます。

例えば、「朝の支度が少し楽になった」「休日に短時間出かけられた」「人と話した後の疲れが減った」といった変化です。

長く不調が続いていると、小さな改善を「この程度では意味がない」と感じることがあります。診察では、まだ困っていることと、できるようになったことの両方を共有してください。

周囲の方に知っておいていただきたいこと

外からは普段どおりに見えても、本人は強い疲労や落ち込みを抱えていることがあります。

「仕事に行けているのだから大丈夫」「もっと気の持ちようを変えればよい」と判断せず、何が負担になっているのかを具体的に聞いてみてください。

励ますことだけでなく、家事や予定の負担を調整する、受診や治療を続けやすくする、といった支え方もあります。

早めに相談していただきたい状態

落ち込みが続き、睡眠、食事、仕事、家事などに影響が出ている場合には、受診を検討してください。

「消えてしまいたい」「生きていても仕方がない」という気持ちがある場合は、長年続いている症状でも軽く扱わず、診察で伝えてください。

自分を傷つける具体的な計画がある、衝動を抑えられない、安全を保てない場合には、一人にならず、身近な方の協力を得て、救急医療につながることが必要です。次回の予約日まで待つ必要はありません。

長年の不調を、性格として抱え込み続ける必要はありません。これまでの経過を整理することから、治療を考えていくことができます。

参考文献・資料

  1. American Psychiatric Association. Persistent Depressive Disorder. DSM-5-TR解説資料. 2022.
  2. Substance Abuse and Mental Health Services Administration. Substance Use Disorder Treatment for People With Co-Occurring Disorders. Updated 2020. Exhibit 4.2: Diagnostic Criteria for PDD.
  3. NICE. Depression in adults: treatment and management. NG222. 特に「Chronic depressive symptoms」の項。
  4. Keller MB, et al. A comparison of nefazodone, the cognitive behavioral-analysis system of psychotherapy, and their combination for the treatment of chronic depression. N Engl J Med. 2000;342:1462–1470.
  5. Schramm E, et al. Effect of disorder-specific vs nonspecific psychotherapy for chronic depression: a randomized clinical trial. JAMA Psychiatry. 2017;74:233–242.
  6. National Institute of Mental Health. Depression. Revised 2024.

情報確認日:2026年10月17日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)