テトラミド(一般名:ミアンセリン)について


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

テトラミドは、ミアンセリン塩酸塩を成分とする四環系抗うつ薬です。

うつ病・うつ状態に使われる薬ですが、診療では睡眠への作用も注目されます。ただし、「眠れるようになったこと」と「うつ病が十分に改善したこと」は、分けて考える必要があります。

この薬には、抗うつ薬としての働きに加え、アカシジアに対する比較試験、せん妄への使用を検討した研究、さらに近年の受容体構造研究まで、興味深い知見があります。

この記事では、基本的な特徴とともに、ミルタザピンとの違いや、研究を診療にどう結びつけるかについて説明します。

テトラミドはどのような薬か?

国内で承認されている効能・効果は「うつ病・うつ状態」です。錠剤には10mgと30mgがあります。

添付文書上、通常成人は1日30mgから開始し、1日60mgまで増量します。分割して服用するほか、1日1回、夕食後または就寝前に服用することもできます。年齢や症状によって調整され、高齢の方では少量から慎重に使用します。

睡眠への作用を期待して処方される場合もありますが、不眠症そのものに国内承認がある薬ではありません。

また、「四環系」という名前は主に化学構造に基づく分類です。同じように環状構造を持つ抗うつ薬でも、作用する受容体や副作用は異なります。薬の性格を理解するには、分類名だけでなく、実際にどこへ作用するかを見る必要があります。

SSRIとは異なる、ノルアドレナリンへの働きかけ

SSRIは、主にセロトニンの再取り込みを抑えることで作用します。一方、ミアンセリンでは、シナプス前のα受容体、特にα2受容体への拮抗作用によるノルアドレナリン放出の促進が、作用機序として重視されています。

α2受容体は、神経伝達物質の放出にブレーキをかける仕組みの一つです。ミアンセリンはその働きを抑えることで、神経伝達に影響すると考えられています。添付文書に記載された基礎研究でも、カテコールアミンの再取り込み阻害は、認められないか弱いとされています。

つまり、抗うつ薬には、再取り込みを抑える以外の作用の仕方もあります。

ただし、うつ病を「ノルアドレナリンが不足している病気」、治療を「不足分を増やすこと」とだけ理解するのは単純化しすぎです。受容体への作用は薬理の説明であり、その人の病態や、治療効果のすべてを説明するものではありません。

眠気が出ることと、抗うつ効果が出ることは別

ミアンセリンは、ヒスタミンH1受容体に強く作用します。

基礎研究では、H1受容体への拮抗作用が示されており、この作用は鎮静や眠気に関係すると考えられています。一方、H1受容体への作用の強さだけで、抗うつ効果の強さを説明できるわけではありません。

この違いは、実際の診察でも大切です。

「飲んだ日から眠れた」という変化があっても、その時点で気分の落ち込み、興味の低下、悲観的な考えなどが十分に改善したとは限りません。

反対に、睡眠が整うこと自体は、本人にとって大きな利益になり得ます。確認したいのは、その変化が翌日の生活につながっているかです。

寝つきだけでなく、朝の起きやすさ、日中の眠気、仕事や家事への取り組みやすさまで合わせて評価します。

「深い睡眠が増える」という研究は、どう読むか?

健康な男性11人を対象とした二重盲検プラセボ対照研究では、ミアンセリンによって、当時の睡眠段階分類でいうステージ3・4の増加が認められました。現在の分類では、おおむね深いノンレム睡眠であるN3に相当する部分です。

これは、単に眠気を生じさせるだけでなく、睡眠の構造にも影響する可能性を示す知見です。

ただし、健康な人の少人数研究から、「うつ病患者の睡眠を必ず正常化する」「深い睡眠が増えるほど治療効果が高い」とまでは言えません。

睡眠脳波の変化と、本人の熟睡感、翌日の機能、うつ病の回復は、それぞれ異なる評価項目です。

研究上の睡眠指標が改善していても、朝の眠気が強く、日中の活動が難しくなっているなら、処方の調整を考える必要があります。

ミルタザピンと似ているが、同じ薬ではない

ミアンセリンは、リフレックス・レメロンの成分であるミルタザピンと比較されることがあります。

両者は関連する化学構造を持ち、α2受容体への拮抗作用など、共通する薬理学的特徴があります。しかし、神経伝達への影響まで同じとは限りません。

1996年のラットを用いたマイクロダイアリシス研究では、ミルタザピンとミアンセリンで、ノルアドレナリン系とセロトニン系への作用に違いが認められました。研究条件下では、海馬の細胞外セロトニン濃度を有意に上昇させたのはミルタザピンで、ミアンセリンでは同様の変化が認められませんでした。

興味深いのは、「同じα2受容体拮抗薬」という説明だけでは、神経回路全体の反応を予測しきれないことです。

ただし、これは動物実験です。この結果だけから、人での抗うつ効果の優劣や、症状ごとの使い分けを決めることはできません。また、一方の用量を、そのまま他方の用量へ置き換えることもできません。

三環系抗うつ薬より、口渇や便秘が少ないのか?

ミアンセリンは、三環系抗うつ薬と比較して抗コリン作用が弱いことが、特徴の一つとされています。

うつ病の外来患者86人を対象とした6週間の二重盲検試験では、ミアンセリン30~60mg/日とノルトリプチリン75~150mg/日が比較されました。抗うつ効果には有意差が認められず、忍容性はミアンセリン群で良好でした。口渇、便秘、頻脈などの頻度や程度に差が報告されています。

この研究は、抗うつ効果と副作用の組み合わせを考えるうえで参考になります。

ただし、古い比較試験であり、「両薬が完全に同等」と証明したものではありません。また、抗コリン作用が弱くても、口渇、便秘、排尿困難が起こらないわけではありません。

緑内障や排尿困難がある方では、ミアンセリンでも注意が必要です。

アカシジアへの小規模試験がある

アカシジアは、「じっとしていられない」「体の内側から落ち着かなさが湧いてくる」といった症状です。抗精神病薬などに関連して起こることがあり、不安や焦燥と見分けにくい場合があります。

ミアンセリンについては、抗精神病薬によるアカシジアを対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験があります。

1999年の研究では、統合失調症の患者30人にミアンセリン15mg/日またはプラセボを5日間投与しました。5日目のBarnesアカシジア評価尺度では、ミアンセリン群で有意な改善が認められています。研究では、5-HT2受容体への拮抗作用が治療仮説として取り上げられました。

抗うつ薬が、気分以外の薬剤性症状に対して研究されている点は興味深いところです。

ただし、少人数・短期間の試験であり、長期の有効性や安全性は十分に評価できません。国内ではアカシジアへの使用は適応外です。

臨床では、まず原因薬との時間的関係を確認し、減量や変更が可能かを検討します。「落ち着かない」という訴えだけから、薬を追加する判断はできません。

アカシジアを改善する研究があるのに、副作用にもアカシジアがある

一見すると矛盾しますが、ミアンセリンの添付文書には、副作用としてアカシジアが記載されています。また、下肢不安症の記載もあります。

ある病態で症状を改善する可能性があることと、その薬が別の条件で同じような症状を起こし得ることは、両立します。

このため、ミアンセリンを飲み始めてから落ち着かなさが生じた場合、「アカシジアに使われる薬だから原因ではない」と判断することはできません。

診察では、次のような違いを聞き分けます。

確認する点判断の手がかり
いつ始まったか開始・増量・併用薬変更との関係
どの時間帯に強いか一日中か、夕方から夜に強いか
どこがつらいか全身の内的不穏か、脚の不快感が中心か
動くとどうなるか歩行や脚の運動で軽くなるか
気分や睡眠の変化不安の増悪、睡眠欲求の低下、活動性の上昇があるか

アカシジア、むずむず脚症候群、不安、躁転などでは、対応が異なります。症状の名前を決める前に、経過を丁寧に確認することが大切です。

せん妄への使用経験と、研究の限界

ミアンセリンは、せん妄に対して使用された研究もあります。

2022年の国内の後ろ向き研究では、せん妄に対してトラゾドンまたはミアンセリンを単剤で定期投与された患者が解析されました。対象はトラゾドン52人、ミアンセリン46人で、改善割合はそれぞれ63.5%、50.0%でした。主要な評価項目について、両群間に統計学的な有意差は認められませんでした。

ただし、この研究には無治療群やプラセボ群がなく、無作為化もされていません。原因疾患の治療や自然経過による改善と、薬の効果を分離できないため、「ミアンセリンがせん妄を治す」と結論することはできません。

また、夜間に静かになったことだけで、せん妄が改善したとは判断できません。注意力、見当識、日内変動なども含めて評価する必要があります。

国内ではせん妄への使用も適応外です。

高齢者では「少量だから大丈夫」とは限らない

高齢者では、薬の量だけでなく、体内から消失する速さにも目を向ける必要があります。

健康な若年成人8人と高齢患者14人を調べた薬物動態研究では、ミアンセリンの終末消失半減期は、高齢者で有意に延長していました。

このような性質は、服用を続けたときの眠気やふらつきを考える材料になります。

初日の反応が軽くても、その後の服用で影響が変わる可能性があります。夜間の歩行、トイレへの移動、翌朝の覚醒状態なども確認したい点です。

添付文書でも、高齢者では起立性低血圧やふらつきが起こりやすいとされ、少量から慎重に投与するよう記載されています。

無顆粒球症は、処方時に共有しておきたい副作用

ミアンセリンで特に押さえておきたい重大な副作用が、無顆粒球症です。

感染防御に重要な白血球の一種が著しく減少し、重い感染症につながることがあります。添付文書では頻度不明とされ、定期的な血液検査が望ましいと記載されています。

初期症状として、発熱、咽頭痛、インフルエンザのような症状が挙げられます。服用中にこうした症状が出た場合は、単なる風邪と決めつけず、速やかに処方元へ連絡し、血液検査や服薬継続の判断を受けてください。

診療では、採血を行うことに加え、「どのような症状が出たら連絡するか」を事前に共有しておくことが重要です。

食欲、体重、心電図にも目を向ける

ミアンセリンでは、食欲亢進や体重増加、浮腫が起こることがあります。食欲が落ちている方でも、食欲の回復と過度な増加を区別し、体重の推移を確認します。

また、重大な副作用にはQT延長や心室性不整脈が記載されています。

もともとのQT延長、徐脈、低カリウム血症、QT延長を起こす薬の併用などがある方では、特に注意が必要です。動悸、強いめまい、失神などがあれば、速やかに医療機関へ相談してください。

「三環系より抗コリン作用が弱い」という特徴だけで、心臓への影響まで一律に小さいとは判断できません。

飲み合わせと、中止するときの注意点

ミアンセリンは、主にCYP1A2、CYP2D6、CYP3A4によって代謝されます。

MAO阻害剤との併用は禁忌で、MAO阻害剤の中止後も一定の間隔が必要です。抗菌薬のリネゾリドも併用注意に挙げられています。さらに、中枢神経抑制薬やアルコールとの併用では、作用が強まる可能性があります。

眠気や注意力の低下があるため、服用中は自動車の運転など、危険を伴う機械操作を避けてください。

また、急な減量や中止によって、振戦、焦燥感、不安などの離脱症状が生じることがあります。睡眠目的で少量を服用している場合も、自己判断で急に中止せず、処方医と減量方法を相談します。

2024年の知見:「受容体を遮断する薬」に、刺激する作用もあった

ミアンセリンに関する近年の興味深い研究に、セロトニン受容体の構造解析があります。

2024年の研究では、ミアンセリンなどの四環系抗うつ薬が、5-HT1E受容体と5-HT1F受容体では、受容体を活性化するアゴニストとして作用することが示されました。クライオ電子顕微鏡や変異導入実験などを用い、受容体との結合様式も検討されています。

従来、「セロトニン受容体を遮断する薬」と説明されてきた薬にも、受容体の種類によっては、刺激する作用があるということです。

5-HT1F受容体は片頭痛治療に関係する標的でもあり、著者らは、こうした作用が四環系抗うつ薬の抗片頭痛作用を説明する可能性に言及しています。

ただし、これは主に分子・細胞レベルの研究です。ミアンセリンを片頭痛に広く使用する根拠や、国内での承認を示すものではありません。

それでも、長く使われてきた薬から新しい作用が見つかる点は、精神薬理の面白さをよく表しています。「古い薬だから、作用はすべて解明されている」とは限りません。

診察では、何を確認していくのか?

ミアンセリンを評価するときは、「眠れたか」だけでなく、治療によって生活がどう変わったかを確認します。

気分の落ち込みや興味の低下が改善しているか。朝起きられるか。日中に活動できるか。眠気、ふらつき、食欲の変化、落ち着かなさが負担になっていないか。

さらに、発熱や咽頭痛など、早めの連絡が必要な症状を共有し、必要な検査を行います。

うつ病に伴う睡眠の問題を扱う場面でも、睡眠への作用と抗うつ効果、安全性をそれぞれ確認しながら、その人にとって続ける利益があるかを判断していきます。

参考文献・資料

・PMDA:テトラミド錠10mg/テトラミド錠30mg 電子添文、患者向医薬品ガイド、医薬品インタビューフォーム。

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情報確認日:2026年10月17日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)