精神科の通院費を安くできる自立支援医療制度とは


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「通院とお薬の費用が、毎月少しずつ負担になっている」
「自立支援医療という制度を聞いたけれど、自分も使えるのでしょうか」

精神科の治療では、症状が落ち着いてからも、再発を防ぐために通院を続けることがあります。1回の支払いがそれほど高くなくても、数か月、数年と続けば、無視できない金額になります。

自立支援医療の「精神通院医療」は、こうした継続的な治療の経済的負担を軽くする制度です。通常3割負担の方では、対象となる診察やお薬の自己負担が原則1割になり、所得や病状に応じて月ごとの負担上限も設けられます。mhlw.go.jp

障害者手帳がなくても、仕事を続けていても利用できる場合があります。ただし、精神科に通っている方全員に自動的に適用されるわけではありません。

自立支援医療は、どんな制度なのか?

自立支援医療には「精神通院医療」「更生医療」「育成医療」の3種類があります。この記事で扱うのは、精神疾患の通院治療を支える「精神通院医療」です。

健康保険に代わる制度ではなく、基本的には健康保険を使ったうえで、患者さんが負担する医療費の一部を公費で補います。mhlw.go.jp

例えば、対象となる診察とお薬の総医療費が月15,000円の場合、3割負担では4,500円ですが、1割負担なら1,500円になります。単純計算では月3,000円、同じ治療費が12か月続けば年36,000円の違いです。

ここでいう1割は「これまで窓口で払っていた金額の1割」ではなく、「保険診療の総医療費の1割」です。

うつ病や不安障害でも使えるのか?

対象は統合失調症だけではありません。うつ病、双極症、パニック症などの不安症、PTSD、発達障害、依存症、認知症、てんかんなど、幅広い疾患が対象になり得ます。

大切なのは、診断名だけでなく、通院による精神医療を継続して受ける必要があるかどうかです。mhlw.go.jp

例えば、同じ適応障害でも、一時的な相談で終わる場合と、症状が続き計画的な通院治療を要する場合とでは、判断が異なります。「この病名なら必ず使える」「この病名だから絶対に使えない」という単純な分け方ではありません。

主治医の診断書などをもとに、自治体が支給認定を行います。

働いている人や、症状が軽くなった人も対象になる?

「働けているので、自分は対象ではないと思っていました」という方もいます。

しかし、この制度は、働けないことや休職していることを条件にしたものではありません。治療を続けながら働いている方も、要件を満たせば利用できます。

もう一つ知っておきたいのが、症状がほとんどなくなっていても対象になり得ることです。

厚生労働省は、軽快した状態を維持し、再発を予防するために通院治療を続ける必要がある場合も対象としています。mhlw.go.jp

精神科では、診察時に元気そうに見えることと、治療を終えられることは同じではありません。うつ病や双極症、統合失調症などでは、現在の安定を支えているのが継続治療という場合があります。

自立支援医療は、「今つらい症状を治す医療」だけでなく、「よくなった状態を守る医療」も支える制度なのです。

「重度かつ継続」は、重症という意味なのか?

制度の説明や受給者証には、「重度かつ継続」という言葉が出てきます。

この表現を見て、「自分はそれほど重い病気なのか」と不安になる方もいます。しかし、これは医療費の負担上限などを決めるための制度上の区分です。日常会話でいう「重症」と、そのまま一致するものではありません。

精神通院医療では、統合失調症、うつ病・双極症などの気分障害、器質性精神障害、精神作用物質による障害、てんかんなどが、疾病による対象として挙げられています。

それ以外でも、3年以上精神医療を経験した医師が、不安や情動・行動の障害などに対して計画的・集中的な精神医療を継続する必要があると判断した場合などに、対象になり得ます。ここには、状態の維持や悪化予防のための医療も含まれます。mhlw.go.jp

つまり、「重度かつ継続」と認定されたからといって、入院が必要な状態、働けない状態、回復しない病気だと説明されたことにはなりません。

医療者にとっても、制度の対象になるかという判断と、「重度かつ継続」に該当するかという判断を区別して説明することが大切です。

月ごとの自己負担上限は、いくらなのか?

原則1割負担に加え、所得区分などによって負担上限月額が決まります。主な区分は以下のとおりです。

所得・認定の区分対象となる医療の自己負担上限月額
生活保護世帯0円
市町村民税非課税世帯で、本人等の年間収入が826,500円以下(低所得1)2,500円
市町村民税非課税世帯で、低所得1以外(低所得2)5,000円
市町村民税課税世帯で、所得割額33,000円未満・「重度かつ継続」に該当5,000円
市町村民税所得割額33,000円以上235,000円未満・「重度かつ継続」に該当10,000円
市町村民税所得割額235,000円以上・「重度かつ継続」に該当20,000円(経過的特例)
市町村民税課税世帯で、所得割額235,000円未満・「重度かつ継続」に非該当原則1割負担。医療保険の自己負担限度額が上限
市町村民税所得割額235,000円以上・「重度かつ継続」に非該当原則として制度の対象外

札幌市の2026年7月1日更新の案内などをもとに整理しています。低所得区分の収入の範囲や、所得割額の算定には制度上のルールがあるため、給与の年収だけで自己判断しないようにしてください。18歳未満では保護者の収入を用いる扱いがあります。city.sapporo.jp

また、所得割額235,000円以上で「重度かつ継続」に該当する方への特例は、2026年10月23日時点で、2027年3月31日までとされています。それ以降については、最新の案内を確認する必要があります。mhlw.go.jp

なお、上限5,000円は「毎月必ず5,000円払う」という意味ではありません。対象医療費の1割が1,500円なら、支払いは1,500円です。

「世帯の所得」は、同居家族全員の年収なのか?

自立支援医療でいう「世帯」は、住民票の世帯と必ずしも同じではありません。原則として、同じ公的医療保険に加入している単位で捉えます。mhlw.go.jp

例えば、親と同居していても、本人が勤務先の健康保険に被保険者として加入し、親とは保険の加入関係が別であれば、同居しているという理由だけで親の所得が合算されるわけではありません。

一方、家族の健康保険の扶養に入っている場合は、被保険者本人の所得が関係します。国民健康保険では、同じ保険世帯の加入者の状況を確認します。mhlw.go.jp

そのため、退職、就職、扶養への加入などで健康保険が変わったときには、負担区分にも影響する可能性があります。

さらに、住民税は過去の所得をもとに決まります。「今月から休職して収入が減った」という事情が、そのまま直ちに負担上限へ反映されるとは限りません。保険や所得の状況が変わったら、自治体の窓口で確認しましょう。

診察代だけでなく、お薬や訪問看護にも使える?

対象になるのは、認定された精神疾患や、それに起因する病態に対する保険診療です。外来の診察や処方薬に加え、必要に応じて精神科デイケアや精神科訪問看護なども含まれます。

ただし、保険適用や医療機関の指定・登録などの条件を満たす必要があります。mhlw.go.jp

また、月額上限は、病院と薬局で別々に設定されるわけではありません。本人について認定された対象医療の自己負担を合計して管理します。そのために使うのが「自己負担上限額管理票」です。

受診時だけでなく、薬局や訪問看護を利用するときにも、受給者証と管理票を提示することが大切です。

一方、入院費、精神疾患と関係のない病気の治療、保険適用外のカウンセリングなどは対象外です。診断書などの文書料も、通常は別途必要です。

「精神科で支払ったお金ならすべて1割になる」という制度ではありません。mhlw.go.jp

どこの病院や薬局でも使えるわけではない

利用できるのは、自治体から指定を受けた「指定自立支援医療機関」のうち、受給者証に記載された病院・診療所、薬局、訪問看護ステーションなどです。

ここでは、医療機関が制度の指定を受けていることと、その患者さんの利用先として登録されていることの、両方が必要です。

例えば、いつもと別の薬局で薬を受け取る場合、その薬局が指定機関であっても、自分の受給者証に登録されていなければ制度が使えないことがあります。

転院や薬局の変更を予定している場合は、受診・利用する前に変更手続きを確認してください。札幌市でも、指定医療機関の変更は事前申請が必要とされています。city.sapporo.jp

申請は、何から始めればよいのか?

まずは診察で、「自立支援医療の対象になりそうですか」と主治医に相談してください。

札幌市では、お住まいの区の保健福祉課が申請窓口です。新規申請では、申請書、自立支援医療用の診断書、健康保険の資格情報が分かるもの、本人確認・マイナンバー関係の書類などを用意します。所得や世帯の状況によって、追加書類が必要になることもあります。city.sapporo.jp

診断書には、診断名だけでなく、症状、経過、治療内容、継続治療が必要な理由などが記載されます。必要な情報を確認して作成するため、初診当日に必ず交付されるとは限りません。

札幌市では原則として事前申請です。過去に支払った通院費が、申請すればすべてさかのぼって戻るわけではありません。

受給者証が届くまでの支払い方や、認定後の精算についても、申請時に医療機関・薬局へ確認し、領収書と申請書の控えを保管しておくと安心です。

一度申請すれば、ずっと使えるのか?

受給者証の有効期間は原則1年で、継続して利用するには更新が必要です。札幌市では、有効期間が終了する3か月前から更新できます。

ここで間違いやすいのが、「診断書は原則2年に1回」と「更新は毎年」という違いです。

治療方針に変更がない場合などには、更新時の診断書を2回に1回省略できます。しかし、診断書が不要な年でも、更新の申請自体は必要です。

札幌市では、有効期間内に更新しなかった場合、継続扱いができず、診断書が必要な新規申請扱いになります。受給者証が届いたら、有効期限と次回の診断書の要否を確認しておきましょう。

診断書が不要な更新や一部の変更については、札幌市ではオンライン申請にも対応しています。city.sapporo.jp

障害者手帳や障害年金も、一緒に申請する必要がある?

自立支援医療、精神障害者保健福祉手帳、障害年金は、それぞれ目的や認定基準が異なる制度です。

自立支援医療は通院医療費の負担軽減、手帳は障害の状態に応じた支援、障害年金は所定の要件を満たす場合の所得保障を担います。

自立支援医療の利用に、手帳の取得や障害年金の受給は必須ではありません。また、自立支援医療が認められたからといって、手帳や年金も自動的に認められるわけではありません。ことのはメンタルクリニック

「医療費を軽くしたい」という相談だけでも構いません。それぞれの制度を、必要に応じて別々に検討できます。

治療の相談には、費用のことも含めてよい

精神科の治療では、薬の効果や副作用だけでなく、無理なく通い続けられることも大切です。

「お金がかかるので受診を延ばしたい」「薬を少なめに飲んで長持ちさせている」という事情があるなら、それも診療上の大切な情報です。費用の問題を伝えることで、制度の利用や治療計画を一緒に検討できます。

自立支援医療は、病気の重さを決めつけるための制度ではありません。継続的な治療が必要な方の負担を軽くし、安定した生活を支えるための仕組みです。

当院でも、自立支援医療の申請についてご相談いただけます。ご自身が対象になるか分からない場合も、診察の際にお尋ねください。

参考資料

制度の確認日:2026年10月23日。

情報確認日:2026年10月23日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)