休職をしたいとき、精神科では何を相談すればいいか

札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。
「仕事を休みたい。でも、診察で何を話せばよいのか分からない」
「休職したいと自分から言うと、診断書だけが目的だと思われないだろうか」
「仕事の話ばかりしてしまいそうで、どこまで相談してよいのか迷う」
休職を考えていても、受診の準備そのものが負担になることがあります。
最初に結論を述べると、精神科では「仕事を休むことも考えています」と、そのまま伝えて構いません。休むべきか決められていない段階でも相談できます。
そのうえで役立つのは、病名を自分で考えることよりも、「いつから何が変わり、仕事や生活のどこに支障が出ているか」を伝えることです。
この記事では、休職を検討するときに診察で相談しておきたい内容と、医師がその情報から何を考えているのかを解説します。
最初のひと言は「休職を考えています」でよい
「休職は医師から提案されるまで待つもの」と考えている方もいます。しかし、休職についての希望や迷いは、診療に必要な情報です。
例えば、次のように切り出せます。
「仕事を続けるのがつらく、休職が必要な状態か相談したいです」
「休みたい気持ちはありますが、収入や職場への影響が心配です」
「会社から診断書の提出を求められています。今の状態で必要か診てほしいです」
このような相談をしたからといって、必ず休職になるわけではありません。反対に、仕事を続けたいと思っていても、病状や安全性から休養を勧められる場合があります。
希望を伝えることと、医学的な判断をお願いすることは両立します。「休むと決めてから受診する」必要はありません。
「つらい」の中身は、症状と生活の変化に分けて伝える
仕事についてのつらさは、気分の落ち込みだけに表れるとは限りません。不眠、吐き気、頭痛、動悸、食欲低下、集中困難などが前面に出ることもあります。
診察では、次のように整理すると伝えやすくなります。すべてを埋める必要はなく、分かる範囲で十分です。
| 伝える内容 | 具体的な伝え方の例 |
|---|---|
| 症状が始まった時期 | 「先月の異動後から眠れなくなりました」 |
| 睡眠の変化 | 「布団には7時間いますが、実際に眠れるのは3〜4時間です」 |
| 食事や体調 | 「朝は吐き気で食べられず、体重も減っています」 |
| 仕事で起きている支障 | 「以前ならすぐ返せたメールに、何十分もかかります」 |
| 帰宅後や休日の生活 | 「出勤はしていますが、帰宅すると食事や入浴ができません」 |
| 勤務日と休日の違い | 「土曜は少し楽ですが、日曜の夕方から動悸が出ます」 |
| 治療歴・薬・飲酒 | 「以前に同じ状態で通院しました。最近は寝るための飲酒が増えています」 |
| 休職についての希望と不安 | 「休養は必要だと思いますが、収入と復帰先が心配です」 |
「いつもより何時間多くかかるか」「週に何回起きるか」といった具体例は役立ちます。ただし、正確な記録を作るために受診を遅らせる必要はありません。
「出勤できています」の後に、その代償も話す
診察で「仕事には行けています」と伝えるときには、その一言で話を終えないことが大切です。
出勤はできていても、ミスを防ぐために何度も確認している。仕事が終わらず、残業で埋め合わせている。帰宅後は何もできず、休日も回復のためだけに使っている。
このような場合、出勤という結果だけでは負担が見えません。
健康上の問題を抱えながら出勤し、仕事の能率が低下している状態は、研究では「プレゼンティーイズム」と呼ばれます。ただし、実際の診察では、能率だけでなく、それを維持するための努力や生活へのしわ寄せにも目を向けます。
「周囲と比べればまだ仕事ができている」場合も、本人の普段の状態から大きく変わっていれば、評価が必要です。
うつ病の就労者86人を対象とした臨床試験の二次解析でも、症状の寛解と仕事の機能の改善には関連が認められ、研究者は症状と機能の両方を評価する必要性を指摘しています。仕事への影響は、気分のつらさとは別に聞き取る価値があるのです。PubMed
「悲しい」より「頭が働かない」が重要な場合もある
うつ病では、注意を保つ力、情報を処理する速さ、記憶、段取りを組む力などに影響が出ることがあります。
「文章を読んでも内容が入らない」
「簡単な判断なのに決められない」
「電話が入ると、直前まで何をしていたか分からなくなる」
こうした変化も、遠慮せず伝えてください。
2019年のメタ解析では、うつ病の抑うつエピソードから寛解した後にも、一部の認知機能の低下が残ることが示されています。すべての人に障害が残るという意味ではありませんが、気分が少し改善したことと、複雑な仕事を安定してこなせることは、同じではありません。PubMed
診察室で短時間の会話が成立していても、割り込みや締め切りのある職場で一日働けるかまでは分かりません。診察中にうまく話せたからといって、仕事の困難を小さく扱う必要はありません。
職種だけでなく「実際に何をする仕事か」を伝える
「事務職です」「接客業です」という説明だけでは、必要な判断材料が足りないことがあります。
同じ事務職でも、一人で進められる仕事と、電話対応、苦情対応、締め切りの厳しい判断が重なる仕事では負担が違います。同じ睡眠不足でも、運転や機械操作を伴う場合には、安全性の問題が大きくなります。
勤務時間、残業、夜勤、通勤、対人対応、責任の重さ、ミスが起きた場合の影響などを伝えてください。
また、「時短勤務はできるが担当件数は減らない」「残業を減らすと仕事を持ち帰ることになる」といった事情も重要です。制度上の配慮があっても、実際の負担が変わらないことがあるためです。
厚生労働省の職場復帰支援の手引きも、病状の回復と職場で必要な業務遂行能力を区別し、仕事内容を踏まえた判断を重視しています。mhlw.go.jp
職場の出来事は、「起きたこと」と「体調の変化」を一緒に話す
人間関係や異動、長時間労働がきっかけになっている場合、その話をして構いません。
伝えやすいのは、出来事と症状を時系列で結びつける方法です。
「担当が増えた頃から帰宅が遅くなり、その2週間後から眠れなくなりました」
「上司との面談の前に吐き気が強くなり、面談後は数日眠れません」
「職場を離れると少し落ち着きますが、会社から連絡が来ると動悸が出ます」
休日や職場から離れた場面で楽になることも、大切な情報です。それだけで病気の有無は決まりませんが、症状がどのような条件で変化するかを考える手がかりになります。
一方、職場との時間的な関連があることだけで、原因のすべてが職場にあると証明できるわけではありません。診察では、身体疾患、睡眠、薬、飲酒、これまでの病歴なども合わせて確認します。
ハラスメントの有無や法的責任の判断と、現在の健康状態に対する医学的な評価は、役割が異なります。相談時に出来事を完全に証明しなければ診察を受けられない、ということではありません。
「話しにくいこと」ほど、治療方針を変えることがある
死にたい気持ち、自分を傷つけたい衝動、飲酒量の増加、薬の飲み過ぎなどは、できるだけ診察の早い段階で伝えてください。
「消えてしまいたい」と感じる程度なのか、具体的な方法を考えているのか、実際に行動したことがあるのかによって、必要な対応が変わります。安全確保を優先し、通常の休職相談より早急な治療が必要になる場合もあります。
また、過去に「ほとんど寝なくても元気だった」「活動や買い物が極端に増えた」「周囲から普段と違うと言われた」時期があれば、それも重要です。現在の落ち込みだけでは分からない病歴が、診断や薬の選び方に関わることがあります。
受診時に落ち着いていても、直近で最も悪かった日の状態を話して構いません。「今日は話せていますが、一昨日は食べられず、起き上がれませんでした」という伝え方で十分です。
診断書については、必要な手続きも一緒に相談する
診断書が必要なら、会社から何を求められているかを伝えてください。
指定の書式、提出期限、記載を求められている項目が分かれば、持参すると役立ちます。分からない場合でも、まず受診して相談できます。
「休職が必要か」に加えて、「いつから休養する必要があるか」「いつ再評価するか」「業務上の配慮で対応できるか」などを相談します。
診断書は診察に基づく医学的な意見です。希望する病名や期間が、そのまま記載されるものではありません。初診時に休養が必要と判断できる場合もあれば、追加の情報や経過の確認が必要な場合もあります。
また、診断書に書かれた期間は、回復する日を保証するものではありません。休養後の状態を確認しながら見直します。
会社への情報共有について不安があれば、誰に何を伝えるのかも相談してください。主治医と職場が連携する際には、本人の同意や情報を共有する範囲への配慮が必要です。mhlw.go.jp
収入の不安と「休んだ後どうするか」も相談してよい
「休む必要があると言われても、生活できるか分からない」
これは治療とは別の話ではありません。経済的な不安が強いと、休養を始めることも、療養に集中することも難しくなります。
勤務先の健康保険の被保険者で、業務外の病気やけがのために働けず、給与が十分に支払われない場合などには、傷病手当金の対象となる可能性があります。連続する3日間の待期を経た4日目以降が対象で、支給期間は支給開始日から通算1年6か月です。実際の支給は、加入先の保険者が要件に照らして判断します。kyoukaikenpo.or.jp
会社の休職制度や給与の扱いは勤務先に、給付の要件は加入先の保険者に確認します。診察では、制度利用に必要な医学的な書類や、利用できる相談先について尋ねられます。
さらに、休養中の過ごし方、次回受診の時期、会社との連絡の負担も相談しておきましょう。例えば、会社からの頻繁な連絡で症状が悪化するなら、窓口や頻度を調整できるか検討する材料になります。
2020年のCochraneレビューでは、治療と仕事に焦点を当てた支援を組み合わせることで、通常のケアに比べて最初の1年間の休業日数が減ると評価されました。ただし、1年以降の就労割合が改善することまでは示されていません。Cochrane
この結果は、休職期間を無理に短くすべきだという意味ではありません。症状の治療に加え、仕事の何が負担になっているかにも取り組む意義を示しています。
うまく話せないときは、このメモだけでも構わない
受診前に文章を整える必要はありません。スマートフォンに、次の内容を数行ずつ書いておくだけでも役立ちます。
- いつから、どのような不調があるか
- 眠る、食べる、身支度をするといった生活がどう変わったか
- 仕事で以前と比べて難しくなったこと
- 勤務日、休日、帰宅後での違い
- 現在の薬、飲酒、過去の通院歴
- 休職についての希望と、いちばん心配なこと
例えば、次の程度でも十分です。
「3週間前から眠れず、出勤前に吐き気があります。仕事では確認に時間がかかり、帰宅後は何もできません。休職が必要か相談したいですが、収入が心配です。」
途中で泣いてしまう、話が前後する、何から説明すればよいか分からなくなる。そうした状態も含めて診察します。メモを見せたり、必要に応じて家族などに補足してもらったりする方法もあります。
休職の相談で必要なのは、休むことの正当性を上手に説明することではありません。今の状態と困っていることを共有し、治療と働き方を一緒に考えることです。
「休みたいけれど、どうすればよいか分からない」。その段階から相談して構いません。
参考文献・資料
- Sarfati D, et al. The effect of remission status on work functioning in employed patients treated for major depressive disorder. Ann Clin Psychiatry. 2017;29(1):11–16. PubMed
- Semkovska M, et al. Cognitive function following a major depressive episode: a systematic review and meta-analysis. Lancet Psychiatry. 2019;6(10):851–861. PubMed
- 厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構.心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
- 全国健康保険協会.傷病手当金
- Nieuwenhuijsen K, et al. Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database Syst Rev. 2020;10:CD006237. Cochrane
情報確認日:2026年10月23日
執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)