精神科の医師と相性が合わないときどうするか

札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。
「先生に話をうまく聞いてもらえていない気がする」
「薬への不安を伝えたいけれど、言い出しにくい」
「通院の前日になると、診察のことを考えて憂うつになる」
精神科に通っていて、このように感じることはありませんか。
最初に結論を述べると、医師との相性が合わないと感じたとき、無理に我慢して通い続ける必要はありません。伝え方や診療の進め方を調整することで改善する場合もあれば、担当医の変更や転院が適切な場合もあります。
ただし、「相性がよい」と「希望がすべて通る」は同じではありません。また、医師を変えることと、治療そのものを中断することも分けて考える必要があります。
今回は、患者さんと医師の関係について、治療成績との関連を調べた研究も交えながら説明します。
精神科の「相性」は、単なる好き嫌いなのか
精神科では、気分や睡眠だけでなく、仕事、家族、お金、過去のつらい経験など、人に話しにくい内容を扱うことがあります。
そのため、「この先生には話しても大丈夫だろうか」という感覚は、診療に関わる重要な要素です。
例えば、副作用を相談した際に強く否定されたと感じると、次に同じようなことがあっても話しにくくなるかもしれません。薬を飲めていないことや、実際には症状が悪化していることを伝えられなくなる場合もあります。
そうなると、医師は十分な情報を得られず、治療の判断が難しくなります。
「相談しやすさ」は、居心地の問題であると同時に、診療に必要な情報を共有できるかという問題でもあるのです。
研究でいう「治療同盟」とは何か
患者さんと治療者が協力して治療に取り組む関係を、専門的には「治療同盟」といいます。
代表的な考え方では、次の3つが重視されます。
| 要素 | 診察での具体例 |
|---|---|
| 目標の共有 | まず眠れるようになりたい、仕事を続けたい、再発を防ぎたいなど、目指す方向を共有する |
| 進め方の共有 | 薬、心理療法、休養、生活調整など、何のために何を行うかを理解して取り組む |
| 信頼関係 | 不安や疑問、失敗したことも、責められることを恐れず相談できる |
ここで面白いのは、治療同盟が「先生が優しいかどうか」だけでは決まらないことです。
親しみやすい医師でも、何を目標に治療しているのか分からなければ、不安が残ることがあります。一方、口数の少ない医師でも、説明が分かりやすく、大切なことを相談できれば、良い関係を築ける場合があります。
相性を考える際には、会話の雰囲気に加えて、「同じ方向を向いて治療できているか」を確認すると整理しやすくなります。
医師との関係は、実際に治療成績と関係する
2018年に発表されたメタ解析では、295の独立した研究、3万人を超える患者さんのデータが検討され、対面の心理療法では治療同盟と治療成績に関連が認められました。相関係数は約0.28でした。
これは、「相性がよければ28%の確率で治る」という意味ではありません。治療同盟が良好なほど、治療成績も良好である傾向があったということです。
また、この研究は主に心理療法についてのものです。結果をそのまま日本の精神科外来すべてに当てはめることはできません。
さらに、「良い関係が改善を促した」のか、「改善したから関係を良く評価するようになった」のか、あるいは両方なのかという問題もあります。
それでも、医師との関係を「治療の本筋とは関係のない気分の問題」と片づけることはできません。
抗うつ薬治療に関する42人の小規模研究でも、それまでの症状変化を考慮したうえで、治療同盟の改善と、その後の症状改善との関連が報告されています。薬物療法でも関係性が意味を持つ可能性を示しますが、少人数の研究であり、因果関係の断定はできません。
「合わない」の中身を、少し分けてみる
「相性が悪い」と感じる理由は、人によって異なります。
| 気になっていること | 整理するポイント | 考えられる対応 |
|---|---|---|
| 話す速度や口調が合わない | 説明が速い、緊張して話せないなど、何が負担か | ゆっくり説明してほしい、メモを使いたいと伝える |
| 話を聞いてもらえない | 特に相談したい内容を扱えているか | 診察の最初に、今日の相談事項を伝える |
| 薬の説明が足りない | 目的、副作用、効果を評価する時期が分かるか | 確認したい点を具体的に質問する |
| 治療の目標が違う | 医師と患者さんで優先順位がずれていないか | 今いちばん困っていることを共有する |
| 必要な治療を受けられない | 心理療法や専門治療など、診療体制の問題か | 連携先や専門医療機関への紹介を相談する |
| 怖くて本当のことを言えない | 否定や威圧への不安が続いているか | 担当医変更や転院、相談窓口の利用を検討する |
| 侮辱や不適切な言動がある | 尊厳や安全が損なわれていないか | 無理に関係修復を試みず、別の受診先や相談先につながる |
伝え方の調整で改善する問題もあれば、その医療機関の診療体制では解決できない問題もあります。
例えば、継続的な心理療法を希望しているのに、その医療機関に提供体制がなければ、医師との人間関係だけを調整しても希望する治療には届きません。
「希望の薬を出してくれる先生」が、必ずしも合う先生とは限らない
相性を考えるうえで、少し注意したい点もあります。
例えば、眠れないため薬を増やしてほしいと思っていても、日中の眠気や転倒、依存などのリスクから、医師が増量を勧めないことがあります。
診断書の内容や休職・復職の判断についても、本人の希望と医師の医学的判断が一致しない場合があります。
意見が違うこと自体は、相性が悪い証拠ではありません。
確認したいのは、医師が理由を説明し、こちらの事情を聞き、可能な代案を一緒に検討してくれるかです。
英国NICEのうつ病診療ガイドラインでも、治療の選択では、臨床的な必要性と本人の希望を踏まえて、共同で意思決定することが勧められています。
「希望を必ず通す」ことと「希望をきちんと検討する」ことは異なります。後者ができているかが、大切な判断材料になります。
診察が短いと、相性が悪いということなのか
診察時間の長さだけでは、治療の質や相性は判断できません。
安定している時期に、必要な確認ができていれば、短い診察で十分な場合もあります。反対に、長く話していても、いちばん困っていることが扱われなければ、不満は残ります。
確認したいのは、時間そのものに加えて、次のような点です。
- 症状や生活の変化を伝えられるか
- 副作用や服薬への不安を相談できるか
- 治療方針について、必要な説明を受けられるか
- 悪化したときの対応を確認できるか
「短いけれど、必要なことは話せている」のか、「話す前に終わってしまい、困りごとが残り続けている」のかで、意味が変わります。
伝えられそうなら、「何に困っているか」を具体的に話す
危険や強い恐怖がなく、相談できそうであれば、気になっていることを一度伝えてみる方法があります。
「先生と相性が悪いです」と伝えるより、何が起きていて、どうしてほしいのかを具体的にすると、調整の糸口が見つかりやすくなります。
例えば、次のような伝え方です。
「緊張すると話がまとまらないので、今日はメモを見ながら話してもよいですか」
「薬を飲むことに不安があります。期待できる効果と、副作用についてもう少し知りたいです」
「眠れているかだけでなく、仕事中のつらさも相談したいです」
「前回の言葉を、自分が責められたように受け取ってしまいました。どういう意味だったのか確認したいです」
「今の治療を、どの時点で見直す予定なのか教えてほしいです」
うまく説明する必要はありません。「説明しにくいのですが、診察で言いたいことを言えなくなっています」という一言から始めても構いません。
ただし、関係を改善する責任を患者さんだけが負うわけではありません。怖くて伝えられない場合や、伝えることでさらに傷つくおそれがある場合は、直接の話し合いを無理に行う必要はありません。
一度すれ違った関係でも、改善することはある
心理療法の研究では、患者さんと治療者の間に生じる協力関係のほころびを「治療同盟の亀裂」と呼びます。
ここには、はっきり不満を伝える場合だけでなく、不満を言わず距離を置くような形も含まれます。表面上、穏やかに診察が終わっていても、本人は納得していないことがあります。
2018年のメタ解析では、11研究・1,314人のデータから、こうした亀裂の修復と良好な治療成績との関連が報告されました。相関係数は約0.29でした。
一方、2026年に公表された別のメタ解析では、治療同盟の亀裂は、より不良な心理療法の成績と関連していました。
つまり、「すれ違いが起きたほうがよい」という話ではありません。
研究から実際の診療への示唆として考えられるのは、すれ違いを放置せず、何が起きたかを共有し、進め方を調整することの大切さです。ただし、これらは主に心理療法の研究であり、話し合えば必ず関係が改善することや、転院するより続けるほうがよいことを証明したものではありません。
こんなときは、我慢を続けなくてよい
診察で傷ついたとき、「自分が気にしすぎなのでは」と考える方もいます。
しかし、侮辱や威圧、差別的な発言、不適切な性的言動などを、相性という言葉だけで処理する必要はありません。
また、相談しても疑問が繰り返し取り合われず、怖くて副作用や症状悪化を伝えられない状態が続いているなら、治療を安全に進めるうえで支障があります。
こうした場合は、担当医の変更、別の医療機関への転院、院内の患者相談窓口や地域の医療安全支援センターへの相談などを検討できます。
関係を改善できる可能性があることと、傷つく状況にとどまらなければならないことは別です。
転院するときは、治療が途切れないように準備する
転院を考える際に大切なのは、次の受診先につながるまでの治療を確保することです。
精神科の初診は予約が必要な場合があり、希望日に受診できるとは限りません。まず転院先に、受け入れの可否、初診日、紹介状の要否を確認すると進めやすくなります。
紹介状には、診断や症状の経過に加え、これまで使った薬、効果、副作用などが記載されます。合わなかった薬を再び試すことを避けたり、治療の経緯を引き継いだりする助けになります。
転院理由を詳しく説明することが負担であれば、
「別の医療機関での治療を希望しているため、紹介状をお願いしたいです」
と簡潔に伝える方法もあります。直接言いにくければ、受付などに手続き方法を確認してもよいでしょう。
紹介状の準備が難しい場合も、受診を諦めず、転院先に相談してください。お薬手帳や、過去の処方内容が分かる資料も役立ちます。
薬が残り少ない場合は、予約日まで足りるかも確認しましょう。特に抗うつ薬やベンゾジアゼピン系薬などは、急な中止によって離脱症状が起こることがあります。医師への不満があっても、自己判断で一斉に中止せず、処方元や転院先に相談することが大切です。
セカンドオピニオンと転院は、目的が違う
「診断や治療方針が妥当か、ほかの医師の意見も聞きたい」という場合には、セカンドオピニオンという選択肢があります。
一般に、正式なセカンドオピニオン外来は、現在の主治医のもとで治療を続けることを前提に、別の医師の意見を聞くためのものです。通常の初診や、その場での処方とは扱いが異なることが多いため、受診先への確認が必要です。
一方、「今後はこちらの医療機関で治療を受けたい」のであれば、転院として相談するほうが目的に合います。
また、医師が複数いる医療機関なら、院内で担当医を変更できる場合もあります。
何を変えたいのかによって、使う方法を選んでよいのです。
次の医師を選ぶときは、「相談できるか」を確かめる
転院先を探すとき、口コミの点数や医師の雰囲気は気になると思います。
ただ、それだけで自分との相性を予測することは難しいものです。診療内容、通院のしやすさ、必要な治療への対応なども確認しましょう。
実際の診察では、次のような点が判断材料になります。
「話した内容を、どう理解したか確認してくれる」
「治療方針の理由を説明してくれる」
「分からないことや不安を質問できる」
「希望と医学的判断が違うときにも、話し合える」
最初から何でも話せる必要はありません。信頼は、診察を重ねながら育つこともあります。
一方、信頼関係を育てることと、つらさをひたすら我慢することは異なります。「ここなら必要なことを少しずつ相談できそうか」という感覚を大切にしてください。
おわりに
精神科の医師との相性に悩むことは、わがままではありません。
気になっていることを具体的に伝えることで、診察が変わる場合があります。それでも相談しにくさが続く場合や、安心して治療を受けられない場合は、担当医の変更や転院を検討して構いません。
目指したいのは、疑問や不安も持ち込める診察です。治療を受けるために、自分の本音を隠し続ける必要はありません。
参考文献・資料
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情報確認日:2026年10月18日
執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)