レンドルミン(一般名:ブロチゾラム)について


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「レンドルミンは、どのような睡眠薬なのか」
「短時間型なのに、翌朝まで眠気が残るのはなぜか」
「長く飲んでいるけれど、やめられるのか」

レンドルミンは、ブロチゾラムを有効成分とする睡眠薬です。寝つきや睡眠の維持を改善する一方、翌朝の眠気、夜間のふらつき、健忘、依存などに注意が必要です。

この薬を理解するには、「短時間型」「よく効く」といった説明から一歩進み、薬が分解される仕組み、夜中に起きたときの機能、中止後に眠れなくなる理由まで考えると、特徴が見えてきます。

レンドルミンはどのように眠りを促すのか

ブロチゾラムは、化学構造上はチエノジアゼピン系に属します。ベンゼン環に代わってチオフェン環を持つ点が特徴ですが、臨床的にはベンゾジアゼピン受容体作動薬として扱われます。

「チエノジアゼピンだから、ベンゾジアゼピンとは依存性が違う」と考えることはできません。

GABAは、脳の神経活動を抑える方向に働く神経伝達物質です。ブロチゾラムはGABA_A受容体のベンゾジアゼピン結合部位を介して、その抑制作用を増強します。薬理学的には、GABAの作用を強める正のアロステリック調節薬として理解できます。bij-kusuri.jp

この作用は睡眠に関わる回路だけに限られません。眠気が得られる一方で、記憶や注意、運動機能にも影響する可能性があります。

また、0.25mgという数字だけを見て「少量だから弱い薬」と判断することもできません。異なる薬のmg数は、作用の強さを共通の物差しで表しているわけではないためです。

寝つきだけでなく、中途覚醒にも作用する

レンドルミンは、短時間型の睡眠薬に分類されます。

ただし、短時間型という分類は、「寝つきにしか効かない」という意味ではありません。電子添文には、入眠時間の短縮に加えて、中途覚醒時間の減少も記載されています。pmda.go.jp

臨床では、「眠りにつくまでの時間」と「夜中に起きてから眠り直すまでの時間」を分けて確認することが役立ちます。

例えば、目が覚める回数が変わらなくても、以前は1時間眠れなかったところが、短時間で眠り直せるようになれば、それも意味のある改善です。

一方、明け方の覚醒が続く場合に、作用時間だけを理由として薬を増やすのは適切とは限りません。うつ病、睡眠時無呼吸、飲酒、就床時刻の早すぎ、体内時計のずれなど、背景を確認する必要があります。

「半減期が約7時間」と「7時間後に薬が切れる」は違う

国内の資料では、健康成人に投与した場合、最高血漿中濃度に達するまでの時間は約1.0〜1.5時間、消失半減期は約7時間とされています。

通常錠とD錠の比較でも、血中濃度の推移は類似しています。bij-kusuri.jp

ここで区別したいのは、血中濃度の変化と、実際に眠くなる時間です。

半減期とは、血中濃度が半分になるまでの時間を表します。体内から薬がなくなる時間ではありません。一方、薬が血中に残っていても、服用直後と同じ強さの催眠作用が続くわけではありません。

したがって、「半減期が約7時間なので、7時間眠れば運転できる」といった判断はできません。

電子添文でも、翌朝以後の注意力・集中力・反射運動能力の低下に注意し、自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事させないよう求めています。pmda.go.jp

薬物動態の数字は処方を考える手がかりになりますが、個々の患者さんの翌朝の状態を保証するものではありません。

興味深い相互作用:「短時間型」が長く作用する薬になることがある

ブロチゾラムは、主として薬物代謝酵素CYP3A4で分解されます。

そのため、同じ量を服用していても、併用薬が変わると、血中濃度や作用時間が変わることがあります。

この点をよく示すのが、イトラコナゾールとの相互作用を調べた研究です。

健康な男性10人を対象とした無作為化二重盲検クロスオーバー試験では、イトラコナゾール200mgを4日間投与し、4日目にブロチゾラム0.5mgを単回投与しました。

結果は次のとおりでした。

評価項目プラセボ併用時イトラコナゾール併用時
消失半減期4.56時間23.27時間
投与後0〜24時間のAUC28.37 ng・h/mL68.71 ng・h/mL

平均値では、半減期は約5.1倍、24時間までの薬物曝露量は約2.4倍となりました。PubMed

ただし、対象は健康な男性10人で、ブロチゾラムの投与量は国内の不眠症に対する通常量0.25mgより多い0.5mgです。すべての患者さんで同じ倍率になるという結果ではありません。

それでも、「短時間型」という性質が、併用薬によって大きく変わり得ることを示す重要な知見です。

以前から同じ睡眠薬を飲んでいる方が急に起きにくくなった場合、加齢や不眠症の変化だけでなく、新しく追加された薬を確認する意味があります。

逆に、CYP3A4を誘導する薬では、ブロチゾラムの作用が弱まることがあります。効かなくなった理由を、すべて耐性で説明しないことも大切です。pmda.go.jp

D錠は、通常の錠剤より速く効くのか

レンドルミンには、通常錠と口腔内崩壊錠のD錠があります。

D錠は口の中で崩れ、唾液とともに服用できる剤形です。ただし、口の中で崩れることと、口の粘膜から素早く吸収されることは同じではありません。舌下吸収を目的とした薬でもありません。

インタビューフォームでは、通常錠とD錠の最高血中濃度とAUCについて同等性が示されています。bij-kusuri.jp

そのため、「D錠の方が強い」「口で溶かせば通常錠より必ず速く眠れる」とは言えません。D錠の主な意義は、服用のしやすさにあります。

「眠れた」ことと「夜中に安全に動ける」ことは別

睡眠薬の評価では、寝つきや睡眠時間に注目しがちです。しかし、夜中に目が覚めた際のバランスや判断力も、実際の生活では重要です。

2019年に報告された研究では、健康な男性30人を対象に、ブロチゾラム0.25mg、スボレキサント20mg、プラセボを比較しました。

無作為化二重盲検クロスオーバー試験で、服薬90分後に参加者を起こし、身体・認知機能を評価しています。

この条件では、ブロチゾラムはプラセボに比べ、身体・認知機能の総合指標を有意に低下させました。一方、スボレキサントとプラセボの間では、その総合指標に有意差が認められませんでした。PubMed

注目したいのは、睡眠を改善する効果が似ていても、服用後に起きたときの機能への影響は同じではない、という点です。

ただし、この試験は健康な男性を対象とした実験で、実生活での転倒や骨折を直接比較したものではありません。スボレキサントなら夜中に安全に動ける、と保証する結果でもありません。

臨床的には、夜間の排尿が多い方、転倒歴のある方、夜中に起きて作業する可能性がある方では、睡眠時間以外の評価が特に重要だと考えられます。

睡眠を「深くする薬」と言い切れるのか

睡眠は、ノンレム睡眠とレム睡眠が周期的に繰り返される構造を持っています。ノンレム睡眠も、N1・N2・N3といった段階に分かれます。

ブロチゾラムの睡眠構築への影響は、研究によって一様ではありません。

電子添文には、健康成人で徐波睡眠やレム睡眠にほとんど影響しないという記載や、不眠症患者で徐波睡眠が増加したという記載があります。一方、過去の短期投与研究には、N2に相当する睡眠が増え、徐波睡眠やレム睡眠が減少したという報告もあります。pmda.go.jp

対象者、投与量、投与期間、治療前の睡眠状態などが異なるため、「必ず深い睡眠を増やす」「必ず深い睡眠を減らす」と単純化することはできません。

さらに、睡眠段階の割合が変わることと、ご本人の休養感、記憶、翌日の活動性が改善することも、別々に確認する必要があります。

「ぐっすり眠れた」という体験は大切ですが、それだけで脳波上の深い睡眠が増えたと判断することはできないのです。

健忘や興奮が起こることもある

レンドルミンでは、服用後の出来事を覚えていない「一過性前向性健忘」や、もうろう状態が報告されています。

これは、昔の記憶が失われるというより、服用後の新しい出来事が記憶として残りにくくなる現象です。

そのため、服用は就寝直前とし、服用後に家事や仕事を続けないことが大切です。

また、鎮静を期待する薬であっても、不穏、興奮、いらいら、せん妄などが現れることがあります。pmda.go.jp

こうした変化が服用開始や増量の後に出現した場合、元の精神症状の悪化と決めつけず、薬の影響も検討します。

依存、耐性、反跳性不眠は分けて考える

長く服用している睡眠薬を減らしたところ眠れなくなった場合、背景には複数の可能性があります。

用語意味解釈するときの注意
身体依存薬の存在に身体が適応し、減量・中止で離脱症状が生じ得る状態処方どおりの使用でも起こり得る。乱用や依存症と同じ意味ではない
耐性同じ量で得られる作用が弱くなること不眠の悪化をすべて耐性で説明することはできない
反跳性不眠減量・中止後に、一時的に治療前より不眠が強くなること服薬中より眠れなくなっただけでは断定できない
不眠症の再燃元の不眠症が再び現れること離脱症状や生活上のストレスと重なる場合がある

レンドルミンの電子添文でも、連用による依存と、急激な減量・中止に伴う不眠や不安などの離脱症状が注意されています。pmda.go.jp

「減らして眠れなかったから、一生必要な薬だ」とも、「眠れないのは気の持ちようだ」とも判断できません。

減量した時期との関係、不安などの随伴症状、経過、日中の機能を確認しながら評価します。

やめるときは、一律のスケジュールで急がない

減薬の進め方は、服用期間、用量、過去の減薬経験、併用薬、現在の精神状態によって変わります。

例えば、1錠から半錠への変更は、錠数としては小さく見えても、用量としては50%の減量です。その変化が負担になる方もいます。

また、別の睡眠薬を追加して眠れるようになっても、それだけでブロチゾラムの身体依存が解消するわけではありません。睡眠を支えることと、離脱症状を避けることは、両方を考える必要があります。

減薬は、薬をなくすことだけを目標にせず、睡眠と日中の生活を保ちながら進めます。

不眠症に対する認知行動療法も重要

慢性不眠症では、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)が重要な治療選択肢です。

米国睡眠医学会の2021年ガイドラインでも、複数の要素を組み合わせたCBT-Iが強く推奨されています。PMC

CBT-Iは、カフェインを控えるといった睡眠衛生の助言だけを指すものではありません。寝床と覚醒の結びつき、床にいる時間、睡眠への不安や考え方などに働きかける治療です。

睡眠薬で眠りを支えながら、眠れない状態を長引かせる要因にも対応することは、継続の必要性や減薬を検討するうえで意味があります。

飲み方と、安全性で確認しておきたいこと

国内での不眠症に対する通常用量は、成人1回0.25mgの就寝前投与です。実際には年齢や症状などに応じて調整します。

飲酒との併用は避け、ほかの睡眠薬や鎮静作用のある薬を使用している場合は、処方医に伝えてください。夜中に目が覚めた際の自己判断による追加服用もしないでください。

急性閉塞隅角緑内障と重症筋無力症は禁忌です。呼吸機能が高度に低下している場合や、肝・腎機能障害がある場合、高齢の方などでも慎重な判断が必要です。妊娠・授乳についても個別に確認します。

なお、保険診療上の処方日数は、1回30日分が限度です。これは処方1回あたりの制限であり、「30日間なら依存しない」「30日を超えたら必ず中止する」という医学的な基準ではありません。pmda.go.jp

不眠症の治療について

睡眠薬の効果を確認するときは、「何時間眠れたか」に加えて、朝に起きられるか、夜中にふらつかないか、仕事や家事がしやすくなったかも確認します。

レンドルミンで十分な効果が得られない場合も、単純な増量の前に、不眠の原因と副作用、併用薬、睡眠習慣を見直すことが大切です。

当院では、不眠の経過や生活への影響を伺いながら、薬物療法や睡眠習慣の調整、継続・減量の必要性を検討します。

参考文献・資料

  1. PMDA:レンドルミン錠0.25mg 電子添文(2025年10月改訂、第2版)
  2. レンドルミン 医薬品インタビューフォーム(2025年10月、第18版)
  3. Osanai T, et al. イトラコナゾールとブロチゾラムの相互作用研究. Br J Clin Pharmacol. 2004;58:476–481.
  4. Seol J, et al. 強制覚醒後の身体・認知機能に関する比較研究. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019;116:24353–24358.
  5. Effects of acute administration of brotizolam in subjects with disturbed sleep.
  6. Edinger JD, et al. 慢性不眠症の行動・心理療法に関するAASMガイドライン. J Clin Sleep Med. 2021;17:255–262.

情報確認日:2026年10月17日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)