天気が悪いと気分が落ち込むのはなぜか


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「雨の日は、朝から気分が沈みます」
「低気圧が近づくと、頭が重くなって何もしたくなくなります」
「天気に左右されるのは、気持ちの問題なのでしょうか」

天気と心身の調子が結びついていると感じる方は、少なくありません。

最初に結論を述べると、天気は、光の量、睡眠や体内時計、身体症状、日常の活動などを通して、気分に影響する可能性があります。ただし、「雨だから必ず落ち込む」「低気圧による落ち込みは、すべて自律神経の問題」と説明できるほど、仕組みが解明されているわけではありません。

この記事では、天気と気分の関係について、身近な対処法から、光を受け取る神経回路の研究まで紹介します。

天気と気分の関係は、研究では意外と単純ではない

「晴れると気分が良くなり、雨が降ると落ち込む」

直感的には分かりやすい説明ですが、実際の研究結果は、そこまできれいにはそろっていません。

Denissenらは、1,233人の日々の気分の記録を、気温、風、日照、降水、気圧、日長のデータと照合しました。天気と気分・疲労感の間には関連が認められましたが、集団全体で見ると、天気が説明できる気分の変動は小さいものでした。一方で、天気への反応には個人差がありました。

ここで区別したいのは、「平均的な影響が小さいこと」と「ある人が強く影響を受けること」です。

集団の平均では影響が小さくても、特定の条件で調子を崩す方がいることは矛盾しません。また、同じ人でも、睡眠不足の日と十分に休めた日では、天気の変化に対する反応が違う可能性があります。

「天気が原因に違いない」と決めつけず、「研究では平均的な影響が小さいのだから、気のせいだ」と切り捨てない。その両方が必要です。

雨そのものより、「光が減ること」が関係している?

天気が悪くなると、周囲は暗くなります。さらに、外出を控えることで、日中に浴びる光の量も減りやすくなります。

光は、物を見るためだけに使われているわけではありません。

目の網膜には、明るさの情報を脳へ伝え、体内時計などの調節に関わる細胞があります。「内因性光感受性網膜神経節細胞」と呼ばれ、英語ではipRGCと略されます。

こうした細胞を通して入る光の情報は、脳の視交叉上核という、体内時計の中枢に届きます。朝から日中の光と夜の暗さは、身体に一日の時刻を知らせる手がかりになります。

例えば、雨で外へ出なくなり、朝も薄暗い部屋で過ごし、昼間に長く眠る。その結果、夜の寝つきが悪くなって翌朝も起きづらくなる、といった経過は考えられます。

この場合、診察で確認したいのは天気だけではありません。

「何時に起きたか」「どれくらい外に出たか」「昼寝をしたか」といった生活の変化も、原因を考える手がかりになります。

光は、体内時計を介さずに気分へ影響する可能性もある

さらに興味深いのは、光と気分の関係が、体内時計の調節だけでは説明しきれない可能性です。

2018年にFernandezらが発表したマウスの研究では、網膜から「手綱周囲核」と呼ばれる視床の領域へ向かう経路が、光による情動関連行動の変化に関わっていました。この経路は、体内時計の中枢である視交叉上核を経由しないものでした。

つまり、光は「眠る時刻や起きる時刻を整える」という働きに加え、情動に関係する神経回路へ、別の経路から働きかける可能性があります。

ただし、これは動物実験です。マウスの行動変化を、人間の「気分の落ち込み」や「うつ病」と同じものとして扱うことはできません。

それでも、光を単なる生活環境の背景として扱わず、脳に入る生物学的な刺激として考える必要があることを示す研究です。

人間でも、日中の光とメンタルヘルスには関連がある

人を対象とした研究でも、光と気分の関係が検討されています。

2023年の研究では、英国の成人86,772人について、機器で測定した光への曝露と精神疾患との関連が解析されました。日中に浴びる光が多いことは、大うつ病性障害などが少ないことと関連し、夜間に浴びる光が多いことは、複数の精神疾患が多いことと関連していました。

この研究の面白い点は、「日中の光」と「夜間の光」を分けていることです。

明るければいつでも良い、という話ではありません。いつ光を浴び、いつ暗く過ごすかが重要だと考えられます。

ただし、この解析は観察研究です。光の条件が精神状態に影響した可能性だけでなく、気分が落ち込んでいるため日中に外出しなくなり、夜も起きていた可能性などが残ります。

「関連がある」という結果を、「照明を変えれば必ず治る」と読み替えることはできません。

「低気圧で自律神経が乱れる」は、どこまで分かっている?

天気による不調について、よく使われるのが「低気圧で自律神経が乱れる」という説明です。

しかし、この言葉だけでは、身体のどこで何が起きているのかが曖昧です。

気圧を感知する仕組みの候補として、研究されているのが内耳です。内耳は、聞こえに加え、身体の傾きや動き、平衡感覚に関わっています。

2019年のマウスの研究では、気圧を下げると、前庭神経核の一部で神経活動の指標となるc-Fosの発現が増加しました。ただし、その実験では、測定した全体的な活動量に有意な変化は認められませんでした。

この結果は、気圧変化に反応する神経の仕組みを考える手がかりになります。

一方で、「低気圧が人間の抑うつ気分を引き起こす経路が証明された」という意味ではありません。気圧に対する神経の反応、頭痛やめまいなどの身体症状、気分の落ち込みは、それぞれ分けて検討する必要があります。

「自律神経」という一言で説明を終えるよりも、頭痛なのか、眠気なのか、めまいなのか、気分の落ち込みなのかを具体的に確認する方が、対応につながります。

身体がつらくなることで、気分も落ち込むことがある

天気と気分の間に、身体症状が挟まっている可能性もあります。

例えば、天気が崩れる時期に頭痛が起こり、痛みのために仕事が進まず、予定していた外出もできなくなる。その結果、気分が沈むという経過です。

慢性的な痛みとうつ病は併存することがあり、互いの状態を悪化させる場合があります。気分だけを見ていると、治療すべき身体のつらさを見落とすことがあります。

ここで大切なのは、症状が起こる順番です。

最初に頭痛があり、その後で気分が沈むのか。気分の落ち込みが先にあり、身体の不快感も強くなるのか。それとも、眠れなかった翌日に両方が悪化するのか。

同じ「雨の日につらい」という訴えでも、この順番によって、優先して対応する問題は変わります。

雨の日に減るのは、日照だけではない

雨の日には、散歩、買い物、人との約束などが減ることがあります。

その結果、身体を動かす機会、会話する機会、達成感や楽しさを感じる機会も減っているかもしれません。

例えば、晴れた日は昼休みに外へ出て同僚と話すのに、雨の日は自席で食事をして、そのまま一日を終える。こうした違いがあるなら、天気の影響を、気圧だけで説明することは難しくなります。

診療では、「天気がどうだったか」に加えて、「その日に何ができて、何ができなかったか」を確認します。

このような見方は、対処法を考えるうえでも役立ちます。雨そのものは変えられなくても、屋内で短時間身体を動かす、人と連絡を取る、楽しめる予定を一つ残す、といった調整はできるからです。

雨の日の落ち込みと、季節性うつ病は同じ?

一日単位の天気に伴う気分の変化と、季節性感情障害、いわゆる季節性うつ病は、区別する必要があります。

季節性感情障害では、特定の季節にうつ状態が現れ、別の季節に改善するという経過を繰り返します。秋から冬に悪化する冬季型では、落ち込みに加え、過眠、食欲の増加、体重増加などが目立つことがあります。

「雨の日に少し気が重い」と、「毎年冬になると何週間も起きられず、仕事や生活が回らなくなる」では、評価する内容が違います。

季節性感情障害には、高照度光療法、心理療法、抗うつ薬などの治療法があります。高照度光療法は、専用の機器を用い、照度や実施する時間帯を調整して行う治療です。日常生活で部屋を明るくすることとは区別されます。

札幌のように季節による明るさや外出条件の変化を感じやすい地域では、数日間の天気だけでなく、一年を通した経過を振り返ることにも意味があります。

天気に左右されるとき、日常では何ができる?

まずは、天気が悪い日にも続けられる、負担の小さい工夫を考えます。

起床後は、明るさを取り入れる

朝はカーテンを開け、日中を薄暗い部屋で過ごし続けないようにします。外出できる条件なら、無理のない範囲で外の明るさに触れることも選択肢です。

一方、夜は就寝前の強い光を減らすなど、昼と夜の明暗を意識します。日中と夜間の光は、分けて考える必要があります。

雨の日用の、小さな予定を作る

外での散歩が難しいなら、室内で少し身体を動かす。外出の予定がなくなったら、友人と短く電話する。

体調に合った規模で構いません。できなかった予定をすべて埋め合わせる必要はありません。

気分だけでなく、睡眠と身体症状も記録する

数週間ほど、気分、睡眠、頭痛やめまい、外出の有無などを簡単に記録すると、診察の参考になります。

例えば、次のような項目です。

記録すること確認したい点
気分・意欲落ち込み、楽しめなさ、取りかかりにくさ
睡眠就寝・起床時刻、昼寝、日中の眠気
身体症状頭痛、めまい、吐き気、身体の重さ
日中の活動外出、運動、人との交流
天気晴れ・曇り・雨などの簡単な記録

気圧の数値を一日に何度も確認する必要はありません。

晴れた日も含めて同じように記録すると、「雨の日は必ず悪いのか」「睡眠不足の翌日の方が影響していないか」など、別の可能性も検討しやすくなります。

「天気のせい」で、受診を先延ばしにしないでください

気分の落ち込みや楽しめなさが続く、睡眠や食欲が大きく変わる、仕事や身の回りのことができなくなる場合は、天気に関係していると感じても相談してください。

うつ病の評価では、症状がどのくらい続き、生活にどのような影響が出ているかを確認します。「晴れた日は少し楽になる」ということだけで、うつ病を否定することはできません。

診察では、「雨の日につらい」に加えて、「晴れても残る症状」「最初に起こる症状」「生活で困っていること」をお話しいただくと、状態を整理しやすくなります。

「天気だから仕方がない」で終わらせず、睡眠、痛み、活動量、気分のどこに働きかけると楽になるかを、一緒に考えていきます。

参考文献・資料

  1. Denissen JJA, et al. The effects of weather on daily mood: A multilevel approach. Emotion. 2008;8(5):662–667. PubMed
  2. Fernandez DC, et al. Light Affects Mood and Learning through Distinct Retina-Brain Pathways. Cell. 2018;175(1):71–84.e18. PubMed
  3. Burns AC, et al. Day and night light exposure are associated with psychiatric disorders: an objective light study in >85,000 people. Nature Mental Health. 2023;1:853–862. 論文
  4. Sato J, et al. Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice. PLoS ONE. 2019;14(1). 論文
  5. National Institute of Mental Health. Seasonal Affective Disorder.
  6. National Institute of Mental Health. Depression.

情報確認日:2026年10月23日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)