精神科で休職の診断書はすぐに書いてもらえるのか


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「仕事へ行くのがつらい。初めての受診でも、休職の診断書を書いてもらえるのだろうか」

「何回か通院しないと、診断書は出せないと言われるのでは?」

「明日から出勤できそうにないけれど、会社には何を提出すればよいのだろう」

休職を考えて精神科を受診するとき、診断書がいつ発行されるかは、切実な問題です。

最初に結論を述べると、診察によって休養が必要と判断できれば、初診当日に休職の診断書を発行できる場合があります。

ただし、受診すれば必ず希望する内容の診断書が出るわけではありません。医学的に判断できる範囲と、医療機関の発行体制によって、対応は異なります。

ここでは、初診で判断できること、経過を確認しなければ分からないこと、そして診断書を相談するときに知っておきたい点を解説します。

初診では診断書を書けない、という一律の決まりはない

休職の診断書について、「最低でも何回か通院しなければならない」という全国共通の決まりはありません。

医師法では、医師が自ら診察せずに診断書を交付することは禁止されています。一方、初診から一定期間が経過しなければ発行できない、とは定められていません。

また、診察した医師には、正当な理由がなければ診断書の交付を拒めないという規定もあります。ただし、これは、患者さんが希望した病名や休職期間を、そのまま記載する義務を意味するものではありません。

診断書に書くのは、診察に基づく医師の判断です。

初診でも判断に必要な情報がそろえば発行できることがありますし、情報が不十分であれば、追加の確認や再診が必要になることもあります。

なお、「当日に医学的な判断ができること」と、「当日に書類を受け取れること」は別です。作成日数や会社指定書式への対応は、受診先へ確認してください。

病名が完全に確定するまで、休めないわけではない

初診では、診断にある程度の幅が残ることがあります。

例えば、気分の落ち込みと不眠がある場合でも、うつ病、適応障害、双極性障害に伴う抑うつ状態、身体疾患や薬剤の影響などを検討する必要があります。

過去の気分の高揚や活動性の変化が、何度か診察するうちに明らかになることもあります。

しかし、病名をより正確に判断するために時間が必要であることと、現在の勤務を続けるのが危険であることは、両立します。

ほとんど眠れておらず、判断力が低下している。出勤前に繰り返し嘔吐する。仕事を続けるなかで、自傷の危険が高まっている。

こうした場合、病気の分類を慎重に検討しながら、先に休養や安全確保が必要と判断することがあります。

診断書には、その時点で判断できる診断名や状態像が記載されます。「抑うつ状態」などの表現が使われることもありますが、それだけで病状が軽いという意味にはなりません。

初診では、病名についての確かさと、休養の必要性についての確かさが、同じ程度とは限らないのです。

「診断書がほしい」と最初に伝えてもよい

「診断書の話を先にすると、休みたいだけだと思われるのではないか」

そう心配して、診察の最後まで言い出せない方もいます。

しかし、会社への提出期限や、すでに出勤が難しくなっている事情は、診療上も大切な情報です。最初に伝えて構いません。

例えば、次のような伝え方で十分です。

「眠れない状態が続いていて、仕事のミスも増えています。休職した方がよいか相談したいです。会社からは、休むなら診断書を提出するよう言われています」

休職したいという希望そのものも、確認すべき情報の一つです。

ただし、診断書の相談と一緒に、いつから何が変わり、どのような支障が出ているかを伝えると、判断に必要な状況が分かりやすくなります。

症状を大きく見せたり、逆に遠慮して小さく伝えたりする必要はありません。

診察室で普通に話せても、働けるとは限らない

精神科の診察では、会話の様子だけで就労能力を判断することはできません。

落ち着いて受け答えができても、長いメールを読めない、複数の指示を整理できない、判断に普段の何倍も時間がかかる、といった問題が起きていることがあります。

うつ病の認知機能を調べたメタ解析では、注意、記憶、実行機能などの低下が報告されています。また、2019年のメタ解析では、抑うつエピソードから寛解した後にも、一部の認知機能の低下が残ることが示されています。すべての患者さんに同じ問題が起こるという意味ではありません。

この知見からも、気分の症状と、仕事で必要になる能力は分けて確認する必要があります。

診察室で一つの質問に答えることと、電話に対応しながら複数の仕事を進め、締め切りを守り、ミスの責任を負うことでは、求められる負荷が違います。

「先生の前では普通に話せてしまったから、つらさが伝わらなかったかもしれない」と感じる方は、職場や自宅で実際に困っている場面を具体的に伝えてください。

初診当日に発行できない場合、何を確認しているのか

当日の発行を見合わせる理由には、いくつかあります。

症状の経過が十分に分からない場合。以前の治療内容を確認する必要がある場合。身体疾患や薬剤の影響など、別の原因を検討する必要がある場合。

また、現在の状態については意見を述べられても、数か月前の状態や、長期間の就労見通しまで判断するには情報が足りないこともあります。

ここで大切なのは、判断できる範囲を区別することです。

「今の勤務を続けることには問題がある」と判断できても、「半年間まったく働けない」とまで予測できるとは限りません。

反対に、休職までは必要なくても、残業の制限、夜勤の回避、業務量の軽減などが必要と判断されることもあります。

休職の診断書が当日出なかったことだけで、症状を否定された、あるいは仮病だと思われたと受け取る必要はありません。何が判断できていて、何を追加で確認するのかを、診察で共有することが大切です。

診断書の期間は、「その日までに治る」という約束ではない

診断書に「1か月の休養を要する」と書かれていると、1か月後には必ず復職しなければならない、と感じるかもしれません。

しかし、最初に記載する期間は、その時点の病状から必要と考えられる療養期間です。回復日を正確に予測したものではありません。

初診時点では、治療への反応や、仕事から離れた後の症状の変化までは分かりません。そのため、一定期間の療養を勧め、経過を確認して延長や復職について再評価することがあります。

最初から長期間の診断書を書くことが、必ずしも丁寧な診療になるわけではありません。短い期間を区切ったからといって、病状を軽く見ているとも限りません。

期間と一緒に、次の診察で何を確認するのかを考えることが重要です。

眠れるようになったか。食事や身の回りのことができるか。仕事から離れても強い不安が続くか。治療による副作用がないか。

こうした変化を見ながら、療養の方針を調整していきます。

過去にさかのぼって診断書を書いてもらえるのか

「先週から欠勤しているので、その日から休養が必要だったと書いてほしい」という相談もあります。

この場合は、発行日と、医学的に評価する対象の期間を分けて考える必要があります。

今日作成した診断書の発行日を、実際とは違う過去の日付にすることはできません。

一方、過去の症状や経過について、診療録や紹介状、そのほかの情報を踏まえ、医学的に判断できる範囲を記載できる場合はあります。

ただし、初診前の状態について、希望された期間すべてを証明できるとは限りません。

特に、「当時から症状があった」ということと、「その期間ずっと仕事ができない状態だった」ということでは、判断に必要な情報が異なります。

すでに休んでいる場合には、欠勤を始めた日、症状の経過、過去の受診歴、会社から求められている内容を、早めに伝えてください。

診断書は、職場で起きた出来事をすべて証明する書類ではない

職場の人間関係や過重労働がきっかけで不調になった場合、診断書に原因まで明確に書いてほしいと考えることがあります。

ここでは、少なくとも三つの判断を分ける必要があります。

現在どのような症状があるのか。仕事を続けられる状態なのか。そして、職場で何が起き、それが発病にどう関係したのか、という判断です。

医師は、患者さんから聞いた経過と診察所見を踏まえ、職場の負荷と症状の関係について医学的な意見を述べることがあります。

しかし、診察だけで、職場での出来事のすべてや、ハラスメントの法的な成立まで確認できるわけではありません。患者さんから聞いた内容と、医師自身が確認した所見も区別する必要があります。

この区別は、患者さんの話を疑うためのものではありません。診断書が、どの範囲を医学的に説明しているのかを明確にするためのものです。

休職の診断書だけで、労災認定や会社の法的責任まで決まるわけではありません。

診断書が出ることと、会社の休職手続きは別である

医師の診断書は、病状や療養の必要性について、医学的な意見を伝える書類です。

一方、会社での休職の扱い、提出先、必要な書式、休職できる期間などは、就業規則や個別の事情によって異なります。

厚生労働省の職場復帰支援の手引きでも、主治医による医学的な判断と、産業保健スタッフなどによる評価、事業者の判断を組み合わせる枠組みが示されています。診療と職場の手続きには、それぞれ役割があります。

また、会社へ提出する休職の診断書と、傷病手当金の申請書は、別の書類です。

傷病手当金は、健康保険の加入状況、療養のために働けないこと、休業期間、給与の支払い状況などによって判断されます。休職の診断書が発行されたことだけで、支給が決まるわけではありません。

受診前後に、会社の担当者へ提出書類や手続きを確認しておくと、行き違いを減らせます。

診断書をもらった後に、何をするかも大切

休職の診断書が必要な方にとって、当日受け取れるかどうかは重要です。しかし、診療の目的は、書類を発行することだけではありません。

仕事から離れて負荷を下げることに加えて、睡眠や生活の立て直し、必要な治療、復帰するときの働き方まで考える必要があります。

2020年のCochraneレビューでは、うつ病のある人に対し、臨床的な治療に仕事に焦点を当てた支援を組み合わせると、通常のケアと比べて、追跡期間1年以内の休業日数が減る可能性が示されました。対象となった9研究について、この結果の確実性は中等度と評価されています。

また、2024年の系統的レビューでは、仕事に焦点を当てた認知行動療法やチームによる支援が、復職を促す可能性が示されています。ただし、エビデンスの確実性は低く、どのような支援でも同じ効果があるとは言えません。

これらは、「早く仕事へ戻せばよい」という研究ではありません。また、診断書を初診当日に発行すること自体の効果を調べた研究でもありません。

研究から読み取れるのは、症状を治療することに加えて、その人が働く環境や、復帰を妨げている問題にも目を向ける必要がある、ということです。

休職の開始時から復職日を急いで決める必要はありません。ただ、落ち着いた段階で何を見直すかという視点は、持っておくと役に立ちます。

受診するときは、うまく説明するより具体的に伝える

診断書を相談するとき、専門的な言葉を使う必要はありません。

次のような情報があると、診察で状況を整理しやすくなります。

伝えてほしいこと具体例
症状が始まった時期と変化2週間前から眠れず、今週は出勤前に吐くようになった
睡眠・食事・生活の状態夜中に何度も目が覚める、帰宅後は食事や入浴ができない
仕事への支障ミスが増えた、メールを読んでも内容が入ってこない
仕事内容と安全上の問題運転がある、危険作業がある、重大な判断を求められる
すでに休んでいる期間いつから欠勤し、有給休暇などを使っているか
会社から求められていること提出期限、指定書式、必要な記載事項
過去の治療や服薬通院歴、現在の薬、以前に休職したことがあるか

話すのが難しければ、メモを見せても構いません。

「休職するべきか自分では分からない」という段階でも、相談できます。

精神科で休職の診断書を初診当日に発行できるかは、診察による判断と医療機関の体制によります。大切なのは、現在の状態を適切に評価し、必要な休養や治療につなげることです。

限界まで耐えて、出勤できなくなったことを証明する必要はありません。今の働き方を続けることに不安があるなら、その時点で相談してください。

参考文献・資料

  1. 医師法 第19条・第20条(厚生労働省掲載)
  2. 厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
  3. 全国健康保険協会「傷病手当金」
  4. Rock PL, et al. Cognitive impairment in depression: a systematic review and meta-analysis. Psychological Medicine. 2014.
  5. Semkovska M, et al. Cognitive function following a major depressive episode: a systematic review and meta-analysis. The Lancet Psychiatry. 2019.
  6. Nieuwenhuijsen K, et al. Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2020.
  7. Brämberg E, et al. Effects of work-directed interventions on return-to-work in people on sick-leave for common mental disorders—a systematic review. International Archives of Occupational and Environmental Health. 2024.

情報確認日:2026年10月23日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)