休職中は何をして過ごせばいいか


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「休職することになったけれど、明日から何をすればいいのだろう」

「仕事を休んでいるのに、ゲームをしたり、友人と会ったりしてよいのだろうか」

「時間があるのだから、資格の勉強くらいした方がよいのでは」

休職が決まると、仕事から離れられた安心感とともに、こうした迷いが出てくることがあります。

休職中は、症状が強いうちは負担を減らし、回復に合わせて生活リズムと活動を整えていきます。最初から復職後と同じ生活を目指す必要はありません。

この記事では、主にうつ病や適応障害などで休職している方を念頭に、日々の過ごし方と復職へのつなげ方を解説します。病気や症状によって必要な対応は異なるため、主治医と相談しながら調整してください。

休職したのに、すぐ楽にならないのはなぜか

仕事を休めば、その日のうちに気分が晴れるとは限りません。

不眠、食欲低下、疲労、集中力の低下などは、職場から離れた後も続くことがあります。仕事について考え続けたり、収入や復職のことが新たな不安になったりする場合もあります。

また、仕事を休むと負担は減りますが、起床時刻、外出、人との会話といった生活の枠組みも同時に失われます。

そのため、「休職したのに良くならない」というときには、薬の効果だけでなく、睡眠、家庭での負担、会社との連絡、経済的不安なども確認します。

休職は治療を受けやすい環境を作る手段ですが、休職という手続き自体が治療のすべてではありません。

過ごし方は、休職してからの日数より「今の状態」で決める

休職生活を、休養を優先する時期、日常生活を整える時期、復職に向けて負荷を試す時期に分けて考えると整理しやすくなります。

回復の段階過ごし方の例
休養を優先する時期食事、水分、睡眠、通院を確保し、それ以外の用事を減らす
日常生活を整える時期着替える、決まった時間帯に食事をとる、近所へ出かけるなど、繰り返しやすい活動を戻す
復職に向けて準備する時期出勤を想定した起床、読書や簡単な作業、必要に応じたリワークなどを検討する

ただし、これは固定された順番や日程表ではありません。

調子に波があれば負担を戻しますし、軽い家事ができても仕事の連絡には耐えられないなど、回復には偏りがあります。

入浴や料理が難しければ、清拭や買ってきた食事で済ませても構いません。通勤練習や試し出勤については、主治医や職場と相談して進めます。

「休職して何週間たったか」だけで、活動量を決めないことが大切です。

休職中に家事を全部引き受ける必要はない

「家にいるのだから、せめて家事くらいは」と考える方は少なくありません。

しかし、仕事を休んだ分だけ、家事や育児を増やしてしまうと、総負担があまり減らないことがあります。

料理、掃除、買い物、家族の予定管理には、体力だけでなく、判断や段取りも必要です。うつ状態では、献立を決めるだけで強く疲れることもあります。

家事ができる日は、できる範囲で行えば十分です。「毎日必ずやる担当」を増やすより、その日の状態で調整できる形にしておくとよいでしょう。

家族にも、「仕事をしていない時間」と「自由に使える体力がある時間」は同じではない、と共有しておくことが役立ちます。

会社からの連絡は、どう扱えばよいか

会社からの通知を見るたびに緊張し、返信を考えて何時間も過ごしてしまう。その状態では、職場に行っていなくても仕事の負担が続いています。

必要な事務連絡は残しながら、窓口と頻度を整理しましょう。

例えば、連絡先を人事担当者など一人にまとめる、定期連絡の日を決める、電話ではなくメールにする、通常業務の相談は担当者へ引き継ぐ、といった方法があります。

すべての連絡を一律に断つという意味ではありません。診断書の提出、休職期間の更新、面談など、必要な手続きを確認したうえで、療養を妨げにくい方法を相談します。

収入や休職期限が気になって休めない場合には、利用できる給付、申請期限、会社の休職制度を早めに確認しておくことも大切です。制度の適用は雇用形態や加入保険などで異なります。

やる気が出るまで待つべきか、少し動いた方がよいか

症状が強い時期に無理をする必要はありません。一方、少し回復してきても、「完全にやる気が戻ったら動こう」と待っていると、生活が広がりにくい場合があります。

うつ病の心理療法に「行動活性化」があります。活動と気分の関係を調べ、本人にとって意味のある行動や、達成感・楽しさにつながる行動を少しずつ取り戻す治療です。

2020年のCochraneレビューでは、行動活性化は通常のケアより抑うつ症状を改善する可能性が示されました。ただし、比較する治療や評価項目によってエビデンスの確実性は異なります。cochrane.org

これは、「忙しくすれば治る」という話ではありません。

例えば、長時間の外出ではなく玄関先に出る、部屋全体の掃除ではなく机の一角を片づける。活動を小さくして、実行した後の気分や疲れを確かめます。

始める前には気が進まなくても、終わった後に少し気分が軽くなることがあります。反対に、強く消耗するなら、量や内容を見直します。

日常で小さな活動を試すことと、専門家が行う体系的な行動活性化療法は同じではありませんが、活動と気分の関係を観察する視点は参考になります。

睡眠と運動は「課題」にしすぎない

休職中は出勤時刻がなくなり、就寝・起床が後ろへずれやすくなります。日中に長く眠り、夜に眠れなくなることもあります。

まずは、今の状態で無理のない起床時間帯を主治医と相談し、食事や日中の活動と合わせて整えます。強い不眠があるのに、生活指導を守るため睡眠時間を削り続ける必要はありません。

眠気が強い場合には、病状だけでなく薬の影響なども確認します。寝酒で調整せず、診察で相談してください。NHS

運動については、2024年のBMJのネットワーク・メタ解析で、218研究、14,170人を対象に、歩行・ジョギング、ヨガ、筋力トレーニングなどによる抑うつ症状の改善が示されました。ただし、多くの比較でエビデンスの確実性は低い、または非常に低いと評価されています。PubMed

この結果を、そのまま「休職中は毎日運動すべき」と読み替えることはできません。

運動の研究に参加できる状態の方と、食事や入浴も難しい状態の方では、始められることが違います。まずは短い外出や軽い動きから、体調に合う範囲を探します。札幌の冬なら、路面状況に応じて屋内で歩く選択肢もあります。

ゲーム、外食、旅行をしてもよいのか

休職中に楽しいことをしたからといって、それだけで療養が不要だったことにはなりません。

好きな時間に始め、疲れたら中断できる活動と、決まった時間に出勤して責任のある仕事を続けることでは、必要な力が異なります。

ただし、趣味なら何でも負担が少ないわけでもありません。ゲームで徹夜する、人と会った後に何日も寝込む、旅行中に服薬や睡眠が乱れる場合には調整が必要です。

判断するときには、「何をしたか」に加えて、「その晩や翌日の生活にどう影響したか」を見ます。

旅行など負担の大きい予定は、病状、治療の継続、会社の就業規則などを確認し、事前に相談してください。医学的に可能かどうかと、勤務先の制度上どう扱われるかは、別に確認する必要があります。

資格の勉強や転職活動は、休職中にした方がよいか

休職期間を有効活用したくなる気持ちは自然です。ただ、「休んだ分を取り返すため」の勉強は、療養に新たな締め切りや評価を持ち込むことがあります。

読めなかった日にも自分を責めずに済む、短時間で終えられる、睡眠や食事を圧迫しない。その程度から試すのがよいでしょう。

興味のある本を読めることと、試験勉強や実務を安定して続けられることも同じではありません。

退職や転職についても、症状が強い時期に結論を急がず、まず選択肢と期限を整理します。ただし、ハラスメントなどの問題が続いている場合には、環境への対応まで先延ばしにする必要はありません。

主治医や産業保健スタッフなどと相談し、安全と生活を守る方法を考えます。

「気分は良くなったのに、頭が働かない」は矛盾ではない

休職後しばらくして、気分や食欲は戻ってきたのに、文章を読むのが遅い、判断に時間がかかる、複数の用事を同時に進められない、と感じることがあります。

ここには、気分の改善と認知機能の回復が必ずしも一致しない、という問題があります。

2026年に掲載されたメタ解析では、244研究をもとに、うつ病が寛解した方の実行機能が検討されました。時間制限のある課題では成績低下がみられ、その差の多くは処理速度の低下によって説明されました。Syddansk Universitet

臨床的には、「時間をかければできる」と「仕事の速度で次々に処理できる」を分けて確認する手がかりになります。

例えば、自宅で時間をかけて書類を読めても、電話対応をしながら、次々に届く依頼を判断して処理することは難しいかもしれません。

ただし、この研究だけで個人の復職可否を決めることはできません。睡眠不足、薬の眠気、不安なども作業に影響します。

復職準備では、作業時間だけでなく、締め切り、同時進行、割り込みへの対応も、仕事内容に応じて考える必要があります。

復職準備は、本人の訓練だけでは完結しない

生活が整っても、復職先が以前と同じ過重労働や対人ストレスを抱えたままであれば、再び不調になるおそれがあります。

2020年のCochraneレビューでは、職場に働きかける介入と臨床的な介入を組み合わせると、通常のケアと比べ、1年間の休業日数が平均約25日少なくなるという推定が示されています。一方、休業している人の割合が減るとは確認されませんでした。cochrane.org

つまり、「本人が治療を頑張れば解決する」とは限らず、職場側の調整も検討する必要があります。

勤務時間、業務量、担当業務、残業、相談先などを具体的に話し合います。厚生労働省の手引きでも、主治医による回復の判断が、そのまま職場で必要な業務遂行能力の回復を意味するとは限らないとされています。mhlw.go.jp

主治医には、職種だけでなく、実際の業務、通勤時間、利用できる配慮を伝えてください。

診察では「一週間をどう過ごしたか」を伝える

「少し良くなりました」という言葉に、具体的な生活の情報を添えると、次の方針を相談しやすくなります。

起床・就寝のおおよその時刻、外出や家事の内容、集中できたこと、活動した後の疲労、会社との連絡で起きた変化などです。

記録は簡単で構いません。「午前に買い物。午後は休息。夜は眠れた」といった短いメモでも役立ちます。記録そのものが負担になるなら、毎日つける必要はありません。

食事や水分が十分にとれない、不眠が続く、死にたい気持ちが強まるときは、定期受診を待たずに相談してください。眠らなくても平気になり、急に活動や買い物が増える場合も、単なる回復とは限らないため確認が必要です。

休職中に「何をするべきか」は、回復とともに変わります。

今は用事を一つ減らすことが必要なのか、外出を少し戻す時期なのか、それとも職場との調整を始める段階なのか。診察では、今の生活をもとに、一緒に考えていきましょう。

参考文献・資料

2026年10月23日確認。

  1. Uphoff E, et al. Behavioural activation therapy for depression in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2020;7:CD013305.
  2. NHS. How to cope with depression.
  3. Noetel M, et al. Effect of exercise for depression: systematic review and network meta-analysis of randomised controlled trials. BMJ. 2024;384:e075847.
  4. Semkovska M, et al. Systematic Review and Meta-Analysis of Executive Function Following Remission From Major Depression. Biol Psychiatry Cogn Neurosci Neuroimaging. 2026;11(2):171–179.
  5. Nieuwenhuijsen K, et al. Interventions to improve return to work in depressed people. Cochrane Database Syst Rev. 2020;10:CD006237.
  6. 厚生労働省.心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き.

情報確認日:2026年10月23日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)