やせる処方薬は何があるか


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「体重を減らす薬には、どのようなものがあるのか」
「マンジャロとウゴービは、何が違うのか」
「飲み薬や漢方でも、注射と同じようにやせられるのか」

体重を減らす作用のある薬は、実際に存在します。近年は、臨床試験で平均体重を十数%から20%程度減らした薬も登場し、肥満症の治療は大きく変わりつつあります。

ただし、「体重が減る薬」と「肥満症の治療薬として承認されている薬」は、同じではありません。また、体重減少率だけでは、その薬が自分に適しているかは判断できません。

今回は、主な薬の種類と作用、研究で分かっている効果、精神科診療との接点について解説します。

※国内の承認状況・使用条件は、2026年10月18日時点で確認した資料に基づきます。

まず、「肥満」と「肥満症」は同じではない

日本では、BMIが25以上の場合を「肥満」と判定します。BMIは、体重kgを身長mの2乗で割った数値です。

一方、「肥満症」は、肥満に関連する健康障害がある場合や、内臓脂肪の蓄積などから医学的に減量が必要と判断される病気です。

つまり、体格を示す「肥満」と、治療の対象となる「肥満症」は区別されます。

さらに、肥満症と診断されても、すべての肥満症治療薬が使えるわけではありません。薬ごとに、BMI、合併症、これまでの食事療法・運動療法などの条件が定められています。pmda.go.jp

体重の数字だけでなく、「何の健康問題を改善するために減量するのか」を確認することが、薬を選ぶ出発点になります。

体重を減らす作用がある主な薬

主な薬を整理すると、次のようになります。国内の位置づけは、特に減量目的で使用する場合に注目して記載しています。

薬・代表的な商品名種類・使い方体重に対する主な作用国内での位置づけ・注意点
チルゼパチド:ゼップバウンドGIP/GLP-1受容体作動薬。週1回の注射食欲やエネルギー摂取を調整する条件を満たす肥満症に承認。一定条件の閉塞性睡眠時無呼吸症候群にも適応がある
セマグルチド:ウゴービGLP-1受容体作動薬。週1回の注射食欲やエネルギー摂取を調整する条件を満たす肥満症に承認
チルゼパチド:マンジャロGIP/GLP-1受容体作動薬。週1回の注射血糖改善に加え、体重減少作用がある2型糖尿病治療薬。糖尿病のない方への減量目的の使用は適応外
セマグルチド:オゼンピックGLP-1受容体作動薬。週1回の注射血糖改善に加え、体重減少作用がある2型糖尿病治療薬。肥満症治療薬としての承認はない
セマグルチド:リベルサス経口GLP-1受容体作動薬。毎日の内服血糖改善に加え、体重減少作用がある2型糖尿病治療薬。空腹時の服用など、吸収のための条件がある
マジンドール:サノレックス中枢性食欲抑制薬。内服中枢神経に作用して食欲を抑える高度肥満症が対象。投与は最長3か月。依存性や精神症状に注意
メトホルミンビグアナイド薬。内服インスリン抵抗性などを改善し、体重が緩やかに減る場合がある糖尿病治療などに使用。肥満症治療薬としての承認はない
SGLT2阻害薬:フォシーガ、ジャディアンスなど内服尿に糖を排泄し、エネルギーを体外に出す製剤により糖尿病、心不全、慢性腎臓病などに使用。肥満症治療薬ではない
防風通聖散など漢方薬。内服体質・症状に応じて肥満症などに用いる製剤ごとの適応を確認する。新しい注射薬と同等の減量効果が確立しているわけではない

同じ成分でも商品ごとに適応や用量が異なります。また、この表は減量効果の順位表ではありません。pmda.go.jp

マンジャロとゼップバウンドは、何が違うのか

マンジャロとゼップバウンドは、どちらもチルゼパチドを有効成分とする薬です。

ただし、マンジャロは2型糖尿病の治療薬、ゼップバウンドは肥満症などの治療薬として承認されています。

同様に、セマグルチドという成分にも、糖尿病治療薬のオゼンピック・リベルサスと、肥満症治療薬のウゴービがあります。

この違いは、単に名前を変えただけということではありません。対象疾患ごとの臨床試験を経て、効果と安全性が評価され、使用条件が設定されています。pmda.go.jp

「同じ成分だから、どの製品でも同じ条件で使える」
「自費診療なら、承認された使い方になる」

というわけではありません。

自費診療か保険診療かという費用の区分と、適応内か適応外かという承認上の区分は、別の問題です。

現在、どの薬が大きな減量効果を示しているのか

セマグルチドでは、平均約15%の体重減少

糖尿病のない肥満・過体重の成人を対象としたSTEP 1試験では、セマグルチド2.4mgを週1回使用した群で、68週後の体重が平均14.9%減少しました。プラセボ群では2.4%の減少でした。

いずれの群でも、生活習慣への介入が行われています。New England Journal of Medicine

ただし、これは肥満・過体重の方を対象に、決められた用量と期間で治療した結果です。

標準体重の方が美容目的で使用した場合や、低用量を短期間だけ使用した場合に、同じ効果が得られることを示すものではありません。

直接比較では、チルゼパチドの減量効果が上回った

異なる試験の数字を並べるだけでは、薬の優劣を正確に比較できません。対象者や治療期間が違うためです。

そこで参考になるのが、チルゼパチドとセマグルチドを直接比較したSURMOUNT-5試験です。

糖尿病のない肥満の成人を対象に、チルゼパチド10mgまたは15mgと、セマグルチド1.7mgまたは2.4mgを、忍容性に応じた最大用量で72週間使用しました。

平均体重減少率は、チルゼパチド群で20.2%、セマグルチド群で13.7%でした。この条件では、チルゼパチドの減量効果が上回っています。New England Journal of Medicine

ただし、非盲検試験であること、糖尿病のない肥満の方が対象であることには注意が必要です。

また、「体重をより減らす薬」が、すべての患者さんにとって最適な薬になるとは限りません。副作用、合併症、治療の継続しやすさも含めて判断します。

GLP-1関連薬は、「胃を動かなくしてやせる薬」なのか

GLP-1関連薬には、胃から腸へ内容物が移動する速度を遅らせる作用があります。

しかし、減量効果はそれだけでは説明できません。脳の摂食調節に関わる経路にも作用し、空腹感や満腹感、食物への反応を変化させることで、エネルギー摂取を減らすと考えられています。pmda.go.jp

このため、治療を受けた方からは「少量で満足するようになった」「食べ物のことを考える時間が減った」といった変化が語られることがあります。

ただし、食欲が適度に落ち着くことと、吐き気で食べられなくなることは別です。

食事や水分が取れないほどの症状を、薬がよく効いている証拠と考えるべきではありません。

飲み薬ではやせられないのか

リベルサスは、飲み方が効果に関わる

リベルサスは、セマグルチドを内服できるようにした薬です。日本では2型糖尿病に承認されています。

特徴は、服用条件によって吸収が左右されることです。

添付文書では、その日の最初の食事や飲水の前に、空腹の状態で約120mL以下の水とともに服用し、その後少なくとも30分は飲食やほかの薬の内服を避けるよう定められています。pmda.go.jp

注射を避けられる点は利点ですが、朝の生活やほかの服薬との調整が必要になります。

また、リベルサスの体重減少効果を説明する際に、注射薬のウゴービ2.4mgで得られた「平均約15%減量」という数字を、そのまま使うことはできません。同じ成分でも、剤形・用量・対象集団が異なります。

メトホルミンは、強力な減量薬とは性質が違う

メトホルミンでは、体重が緩やかに減少する場合があります。ただし、一般にその程度は、新しいインクレチン関連薬より小さいとされています。American Diabetes Association

肥満症治療薬として国内承認されているわけではなく、「安価な飲み薬だから、誰でも減量のために使える」とは考えられません。

腎機能や脱水などの状態によっては、乳酸アシドーシスの危険性にも注意が必要です。pmda.go.jp

SGLT2阻害薬は、糖を尿に出す薬

SGLT2阻害薬は、腎臓での糖の再吸収を抑え、尿中への糖排泄を増やします。それに伴って体重が減少することがありますが、肥満症治療薬ではありません。

特に注意したいのは、血糖値が著しく高くなくても、ケトアシドーシスを起こす可能性があることです。

体調不良で食べられない場合や、極端な糖質制限などが重なる状況では、より慎重な対応が必要です。「糖を出す薬だから、食べなければさらにやせる」という使い方は危険です。pmda.go.jp

サノレックスは、精神科では特に注意が必要

サノレックスは、マジンドールを有効成分とする食欲抑制薬です。

食事療法・運動療法で十分な効果が得られない、BMI35以上などの高度肥満症が対象で、投与期間は最長3か月です。1か月以内に効果が認められなければ、中止することが定められています。

依存性や肺高血圧症への注意も必要です。

精神科診療で特に重要なのは、不安・抑うつ・異常興奮状態の患者さんや、統合失調症などの精神障害がある患者さんが、添付文書上の禁忌に含まれていることです。pmda.go.jp

したがって、「精神科の薬で太ったので、サノレックスで食欲を抑える」という単純な対応はできません。

体重増加に困っている場合でも、精神症状や現在の治療内容を踏まえた選択が必要です。

防風通聖散は、誰にでも使える「脂肪燃焼薬」ではない

防風通聖散は、肥満症に使用されることがある漢方薬です。

ただし、例えばツムラの医療用製剤では、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちな方の肥満症などが適応になっています。体質や症状を考慮して使う薬であり、体重を減らしたい方全員に適しているわけではありません。

また、漢方薬にも副作用があります。防風通聖散では、肝機能障害、間質性肺炎、偽アルドステロン症、長期使用に伴う腸間膜静脈硬化症などに注意が必要です。pmda.go.jp

便通やむくみが変化したことによる体重減少と、体脂肪が減ったことも区別する必要があります。

「漢方だから安全」「便が出るほど脂肪が落ちる」という理解は適切ではありません。

なお、オルリスタットを含む「アライ」は、国内では処方薬ではなく、薬剤師による確認・指導のもとで購入する要指導医薬品です。処方薬と市販薬は、分けて考える必要があります。brand.taisho.co.jp

医学的に重要なのは、「何kg減るか」だけではない

体重減少と、心筋梗塞・脳卒中の予防は別の評価項目

肥満症治療の研究では、体重だけでなく、将来の病気を減らせるかも検討されています。

SELECT試験では、心血管疾患の既往があり、糖尿病のない過体重・肥満の成人を対象に、セマグルチド2.4mgの効果を調べました。

心血管死・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中を合わせた主要評価項目の発生割合は、セマグルチド群で6.5%、プラセボ群で8.0%でした。ハザード比は0.80で、相対的なリスク低下は約20%です。New England Journal of Medicine

ここでいう20%は、発生割合が20ポイント下がったという意味ではありません。

また、この結果は心血管疾患の既往がある集団で得られたもので、若く健康な標準体重の方に、そのまま当てはめることはできません。

体重減少率の順位と、心血管疾患予防の根拠は、別々に評価する必要があります。

体重が減るとき、脂肪だけが減るわけではない

チルゼパチドのSURMOUNT-1試験の体組成解析では、減少した体重の約75%が脂肪量、約25%が除脂肪量でした。

この割合は、プラセボ群でもおおむね同様でした。したがって、この結果だけで、チルゼパチドが特異的に筋肉を減らすとはいえません。PubMed

一方、除脂肪量には筋肉以外の組織や水分も含まれるため、「減った体重の25%が筋肉だった」と言い換えることも正確ではありません。

それでも、減量中に栄養や筋力を守る視点は欠かせません。

特に高齢者や、もともと筋力が低い方では、体重計の数字だけでなく、食事内容、筋力、歩行、日常生活の動きやすさも確認することが大切です。

薬をやめると、体重は戻るのか

戻ることは少なくありません。

STEP 1試験の延長調査では、セマグルチドと生活習慣への介入を終了した後、1年間で、それまでに減った体重のおよそ3分の2が再増加しました。pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

ただし、薬だけでなく生活習慣への介入も終了しているため、この結果をすべて薬の中止だけで説明することはできません。

それでも、肥満症治療を「数か月だけ薬を使い、体重が減ったら完了」と考えることには限界があります。

中止後の体重再増加は、それだけで薬物依存を意味するものでもありません。食欲や体重調節への薬の作用がなくなり、再び体重が増えやすくなることと、依存症は区別されます。

開始する際には、減量目標だけでなく、維持期の食事・運動、治療を続けられる期間、中止する場合の経過観察まで考えておく必要があります。

精神科の薬で太った場合は、どう考えるのか

抗精神病薬などによる体重増加は、治療を続けるうえで大きな負担になります。

この場合は、減量薬を追加する前に、体重増加の時期と処方変更の関係、食欲、眠気、活動量、血糖や脂質などを確認します。

原因となり得る薬を変更できるか検討することもありますが、精神症状の安定との兼ね合いがあり、体重だけを理由に一律に切り替えられるわけではありません。

興味深いのは、メトホルミンについて、すでに増えた体重への対応だけでなく、抗精神病薬開始時の体重増加予防を検討した研究があることです。

国際的なガイドライン作成論文では、抗精神病薬と同時にメトホルミンを開始することで、対照群に比べて体重増加を平均約4kg抑えたと報告されています。

これは「誰でも4kgやせる」という意味ではなく、抗精神病薬による体重増加が、比較した群より少なかったという結果です。また、この目的での使用は、日本で承認された適応とは区別する必要があります。pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

精神症状の改善と身体の健康を、両方守る治療計画が大切です。

副作用と、受診が必要な症状

GLP-1関連薬やチルゼパチドでは、吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹部不快感などがみられます。

一方、次のような症状は、よくある胃腸症状として放置せず、速やかに医療機関へ相談する必要があります。

  • 持続する強い腹痛、特に嘔吐を伴う場合
  • 強い腹部膨満、便やガスが出ない状態
  • 水分が取れない、尿が少ない、強いふらつき
  • 冷汗、震え、意識がぼんやりするなどの低血糖を疑う症状

急性膵炎、胆道系の病気、腸閉塞を含むイレウス、脱水などの可能性を考えます。低血糖には、特にインスリンや一部の糖尿病薬との併用時に注意が必要です。pmda.go.jp

また、妊娠中・妊娠の可能性がある場合や、妊娠を予定している場合は、事前の相談が必要です。チルゼパチドでは、開始初期や増量直後に経口避妊薬の効果が弱まるおそれも記載されています。

手術や鎮静を伴う検査を受ける際にも、使用中であることを担当医に伝えてください。胃内容物が残り、誤嚥のリスクに関わる可能性があります。pmda.go.jp

保険で処方してもらえるのか

肥満症治療薬であっても、「体重を減らしたい」という希望だけで保険適用になるわけではありません。

例えばウゴービの肥満症適応では、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあり、食事療法・運動療法で十分な効果が得られないことに加え、次のいずれかが必要です。

  • BMI27以上で、肥満に関連する健康障害が2つ以上ある
  • BMI35以上である

さらに、保険診療では、施設・医師の要件や、これまでの治療経過なども確認されます。pmda.go.jp

ゼップバウンドも、承認上の対象と保険給付の条件を確認する必要があります。2026年の添付文書では、肥満症適応における耐糖能障害の扱いについて、承認条件と保険給付条件に違いがあることが明記されています。pmda.go.jp

「肥満症の診断がある」「薬の適応に入る」「保険給付の条件を満たす」は、それぞれ分けて判断されます。

減量薬を選ぶときに大切なこと

体重を減らす薬の選択肢は増え、肥満症に対して大きな効果を示す治療も登場しています。

一方、治療で目指すものは、体重を可能な限り低くすることではありません。血糖や血圧、睡眠時の呼吸、動きやすさなど、その方の健康問題を改善することです。

標準体重でも「もっとやせなければ」と感じる場合や、体重への不安から食事を強く制限している場合には、減量とは別の評価や支援が必要になることもあります。

薬の効果、栄養状態、筋力、生活の質を確認しながら、無理なく続けられる治療を考えていきます。

参考文献・資料

  1. PMDA.ウゴービ、ゼップバウンド、リベルサス、サノレックス、ツムラ防風通聖散の電子添文。
  2. 厚生労働省.最適使用推進ガイドライン:セマグルチド製剤〈肥満症〉。2026年6月改訂。
  3. 関連学会合同.肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント。2025年4月10日改訂。
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  9. Metformin for the Prevention of Antipsychotic-Induced Weight Gain: Guideline Development and Consensus Validation. Schizophr Bull. 2025〔オンライン公開2024年〕. PMID: 39657713.
  10. American Diabetes Association. Obesity and Weight Management for the Prevention and Treatment of Type 2 Diabetes: Standards of Care in Diabetes—2025. Diabetes Care. 2025.

情報確認日:2026年10月18日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)