うつ病で休職する期間はどのくらいが一般的なのか


札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。

「うつ病で休職することになったけれど、何か月くらい休むものなのだろう」
「診断書には1か月と書いてある。1か月で治さなければいけないのだろうか」
「3か月休んでも戻れない自分は、回復が遅すぎるのだろうか」

うつ病で仕事を休むとき、先の見通しが立たないこと自体が、大きな不安になることがあります。

最初に結論を述べると、うつ病の休職期間に一律の標準はありません。数か月単位の療養も視野に入れながら、症状、生活機能、仕事内容、職場の受け入れ条件を確認して見直していきます。短期間で復職できる方もいれば、半年以上の療養が必要になる方もいます。

国内研究には休職期間の中央値が約3か月という報告がありますが、これを「3か月休めば治る」「3か月以内に復職するべき」という意味で受け取ることはできません。

この記事では、休職期間の数字の読み方、診断書に書かれる期間の意味、そして休職が長引くときに確認したいことを解説します。

「一般的には3か月」は、どこまで本当なのか

日本の労働者を対象としたJ-SAR研究では、抑うつによる休職を2回経験し、いずれも復職した214人について、休職期間が調べられています。

結果は次のとおりでした。

休職の回数休職期間の中央値休職期間の平均値
初回の休職87.5日107.3日
2回目の休職90日156.9日

中央値は、期間の短い順に並べたときの中央にあたる値です。約3か月という数字は、一つの参考にはなります。

ただし、この研究は、すべてのうつ病患者さんを調べたものではありません。2回の休職後にいずれも復職した人に対象が限られ、診断書上のICD-10のF3、つまり気分障害の区分に基づいています。厳密に大うつ病性障害だけの全国代表データではない点にも注意が必要です。

したがって、ここから「日本のうつ病の休職期間は平均3か月」と結論づけることはできません。PMC

休職期間を調べるときは、数字だけでなく、誰を対象に、どこからどこまでを数えたかを見る必要があります。

平均値と中央値の違いから見えること

先ほどの研究では、初回と2回目の中央値はほぼ同じですが、2回目の平均値は長くなっています。

平均値は、一部の非常に長い休職の影響を受けやすい数字です。この違いは、中央付近の期間だけを見ていると、長期化する方の存在を捉えにくいことを示しています。

臨床で考えたいのは、「真ん中の人は何日だったか」に加えて、「この方は長期化しやすい事情を抱えていないか」という点です。

また、再休職したからといって、全員が前回より長い休職になるわけでもありません。

集団の統計は、本人の復職予定日を決めるカレンダーにはならないのです。

診断書の「1か月の休養」は、1か月で治るという意味ではない

休職の診断書に「1か月の休養を要する」と書かれていると、患者さんも職場も「1か月後には復職できる」と受け取ってしまうことがあります。

しかし、診断書の期間は、その時点の病状に基づく休養の見通しです。病気が治る期限を保証するものではありません。

例えば、まず一定期間仕事を離れ、睡眠や食事を立て直し、治療への反応を見たうえで、その後の休職継続や復職準備を判断する場合があります。

同じ「1か月」でも、「その間は休養が必要」という判断と、「その翌日から通常勤務が可能」という判断は別です。

診断書の更新が必要になった場合も、それだけで治療の失敗を意味するわけではありません。最初には分からなかった回復の速度や、職場側の事情が、その後に明らかになることもあります。

一方で、更新を繰り返す際には、何が改善し、何が復職の障壁として残っているのかを確認することが大切です。

休職期間には、いくつもの「時間」が含まれている

休職期間を理解するには、次の時間を分けて考えると整理しやすくなります。

一つ目は、強い抑うつ、不眠、食欲低下、自責感などが改善するまでの時間です。

二つ目は、朝起きて日中に活動し、外出や作業を繰り返せるようになるまでの時間です。

三つ目は、実際の仕事に必要な集中力、判断力、対人対応、疲労への対処を取り戻す時間です。

四つ目は、勤務時間や業務内容、配置、相談先などを職場と調整する時間です。

これらは順番どおりに進むとは限らず、重なりながら進みます。

例えば、気分は改善していても、会社との面談や受け入れ部署の調整が終わらなければ、復職日は決まりません。逆に、会社が受け入れ可能でも、出勤時刻に起きられず、日中の活動が安定しなければ、準備が足りない場合があります。

休職が長い理由をすべて「病気が重いから」と説明すると、こうした違いを見落とします。

気分が良くなってから、働く力が戻るまでに時間差がある

うつ病の回復では、「落ち込みが軽くなったこと」と「働けるようになったこと」を分けて確認します。

食事がおいしくなり、家族と会話できるようになった。それでも、文章が頭に入らない、複数の用事を整理できない、短時間の作業で強く疲れる、ということがあります。

仕事では、気分の安定に加え、作業の持続、優先順位づけ、予定変更への対応などが求められるためです。

就労中の大うつ病性障害患者86人を対象とした12週間の試験の二次解析では、症状が寛解した人は仕事の機能も改善していました。一方、研究者らは、治療評価に症状と生活・仕事の機能の両方を含める必要があるとしています。PubMed

つまり、症状の改善は重要ですが、症状の点数だけで休職終了日を決めるのは不十分です。

「元気そうなのに、なぜまだ休んでいるのか」という疑問の背景には、外から見える表情と、実際に仕事を続ける力の違いがある場合があります。

「3か月たったのに戻れない」ときに確認したいこと

一定期間休んでも復職の見通しが立たない場合、単に「もう少し休みましょう」と延長するだけでは、次の方針が見えにくくなります。

まず、抑うつ、不安、不眠、疲労など、どの症状が残っているかを整理します。薬の効果や副作用、服薬状況、心理社会的な支援の内容も確認します。

次に、診断や併存する問題を必要に応じて再評価します。

過去に躁状態・軽躁状態を疑う時期がなかったか。睡眠時無呼吸など別の睡眠の問題がないか。身体疾患、飲酒、薬による眠気などが、回復を妨げていないか。

検査や診断の見直しは、症状や経過に応じて行います。休職が長いという理由だけで、すべての人に同じ検査が必要になるわけではありません。

さらに、職場の問題も確認します。

長時間労働やハラスメントが続いている、復帰先が決まらない、会社の求める復職条件が曖昧といった場合、本人の症状だけを治療しても復職にはつながらないことがあります。

「まだ治っていない」のか、「働く準備が足りない」のか、「戻れる職場条件が整っていない」のか。ここを分けることで、次に必要な対応が変わります。

長く休めば、それだけ再発しにくくなるのか

必要な時期に十分休むことは大切です。しかし、休職期間を長くするほど、その後の再発が減るという単純な関係ではありません。

ここでは、観察研究の読み方にも注意が必要です。

例えば、「休職が長い人ほど、その後も仕事に戻りにくい」という関連があったとしても、それだけで「長く休ませたことが悪かった」とは言えません。

病状が重い、これまでの再発が多い、職場の調整が難しい、といった事情が、休職の長さと復職の難しさの両方に影響している可能性があるからです。

反対に、「短期間で戻った人の経過が良かった」という結果も、早く戻した効果とは限りません。もともと早く回復できる人が、短期間で戻っていた可能性があります。

知りたいのは「長く休んだ人はどうなったか」だけではなく、「同じような状態の人に、休職期間を変えたら何が起きるか」です。この二つは異なる問いです。

したがって、統計の数字から一律に休職を短縮したり、延長したりすることはできません。

休職中は、ずっと何もせずに過ごすべきなのか

症状が強い時期には、仕事の連絡や義務から離れ、睡眠、食事、安全を確保することが優先されます。

その段階で資格勉強や運動を課題にしてしまうと、「休んでいるのに何もできない」と、かえって自責感を強める場合があります。

一方、回復してきたら、休職中の過ごし方も少しずつ変えていきます。

起床時刻を整える、短時間外出する、簡単な作業に取り組む、活動後の疲れを確認するなど、現在の状態に合った準備を考えます。

休み始めと復職直前で、同じ過ごし方を続ける必要はありません。

ただし、活動を増やせば必ず早く復職できるわけでもありません。活動した当日だけでなく、その晩の睡眠や翌日の体調まで見て、負荷を調整します。

休職期間は、ただ日数が過ぎるのを待つ時間ではなく、回復段階に合わせて目的が変わっていく時間と考えるとよいでしょう。

復職の準備は、認知機能の検査だけでは測れない

医療者にとっても興味深いのが、復職準備をどのように評価するかという問題です。

2025年の国内縦断研究では、大うつ病性障害のある24人について、復職準備性、認知機能、復職1年後の就労継続との関係が検討されました。

復職準備性の評価は就労継続と関連しましたが、調べられた認知機能の指標によって、その関係が説明されることは示されませんでした。jstage.jst.go.jp

少人数の探索的な研究で、一般化には限界があります。それでも、「頭の働きを検査すれば復職時期が決まる」というほど単純ではないことを考える材料になります。

ここから臨床的に考えられるのは、検査結果に加え、生活リズム、活動の継続、対人場面への対応、自分の不調への気づき、支援を求める行動など、実際の生活と仕事に近い情報を集める必要があるということです。

リワークなどの復職支援を利用する場合も、何か月通ったかに加え、何が安定し、どの課題が残っているかを共有することが大切です。

同じ人でも、仕事内容によって必要な休職期間は変わる

復職は、本人の回復状態と仕事の要求が合うかどうかの問題でもあります。

例えば、業務を限定し、定時で帰り、困ったときに相談できる条件なら始められる方でも、夜勤、長時間労働、頻繁な突発対応がある仕事では、さらに準備が必要になることがあります。

厚生労働省の手引きも、主治医の「復職可能」という判断が、実際の職場で求められる業務遂行能力の回復まで意味するとは限らないと指摘しています。mhlw.go.jp

そのため、診察では「事務職です」「接客業です」といった職種名だけでなく、勤務時間、通勤、作業の複雑さ、対人負荷、判断責任、利用できる配慮を伝えることが役立ちます。

復職のために本人がどこまで回復する必要があるかは、職場側がどのような仕事を用意できるかによっても変わります。

なお、医学的に必要な療養期間と、就業規則上の休職上限は別の問題です。期限が迫っている場合は、主治医に早めに伝え、職場とも手続きや選択肢を確認してください。

休職が終わっても、治療が終わるとは限らない

休職期間と治療期間も、分けて考える必要があります。

抗うつ薬を飲んでいるから復職できないわけではなく、復職できたから薬が不要になったわけでもありません。

英国NICEの成人うつ病ガイドラインでは、症状が寛解した後も少なくとも6か月の服薬継続が必要になる可能性を説明し、定期的に見直すことが勧められています。再発リスクなどにより、さらに長く治療を続ける場合もあります。NICE

この「6か月」は、全員が6か月以上休職するべきという意味ではありません。仕事に戻りながら治療を続けることもあります。

復職を目標に自己判断で薬をやめたり、通院を中断したりせず、働き方と治療を両立できる形を相談していきます。

「何か月休むか」と一緒に、「次に何を確認するか」を決める

休職を始める段階で、正確な復職日まで見通せないことはあります。

その場合も、次の診察で何を確認するかが分かると、療養の見通しを立てやすくなります。

「まず睡眠と食事が安定するかを見る」
「日中に活動できる時間が増えているか確認する」
「作業をした翌日も、生活が崩れないかを見る」
「職場が用意できる勤務条件を確認する」

こうした具体的な確認事項を、回復段階に応じて更新していきます。

「3か月休んだから戻る」「半年休んだから、まだ戻れないのはおかしい」と、月数だけで判断する必要はありません。

休職期間は、ほかの人と回復の速さを比べるための数字ではありません。必要な治療を受け、働く準備を進め、復帰先の条件を整えるための期間です。

診察では、休んだ長さに加え、できるようになったこと、まだ難しいこと、職場から求められていることを伝えてください。そこから、休養の継続、治療の見直し、復職準備のどれを進めるか、一緒に考えていきます。

参考文献・資料

  1. Endo M, et al. Durations of first and second periods of depression-induced sick leave among Japanese employees: the Japan sickness absence and return to work (J-SAR) study. Industrial Health. 2019;57:22–28.
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  4. 厚生労働省.心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き.
  5. NICE. Depression in adults: treatment and management. NG222.

情報確認日:2026年10月18日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)