統合失調症


統合失調症

札幌市の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。


「周囲に誰もいないのに、自分のことを話す声が聞こえる」
「誰かに監視されているように感じて、安心できない」
「考えがまとまらず、仕事や学校で以前のように過ごせなくなった」

このような症状の背景に、統合失調症がある場合があります。

統合失調症は、知覚や考え、意欲などに変化が生じ、日常生活に支障をきたす病気です。症状や経過には個人差がありますが、薬物療法や生活面の支援によって症状を和らげ、自分らしい生活の回復を目指すことができます。

本人の気持ちの弱さや、ご家族の育て方だけで説明できる病気ではありません。また、「人格が二つに分かれる病気」という意味でもありません。

統合失調症の概要

統合失調症では、実際にはない声が聞こえる、周囲の出来事を自分に関係する特別な意味として受け取る、考えを整理することが難しくなる、といった変化がみられます。

一方で、目立つ幻覚や妄想だけが、この病気の症状ではありません。意欲の低下や集中力の低下が続き、家事や仕事、人付き合いに困難が生じる場合もあります。

思春期から若い成人期に発症することが多いものの、それ以外の年代で発症する場合もあります。早い段階で不調に気付き、適切な評価や治療につなげることが大切です。

原因は分かっているのか?

原因は一つには特定されていません。

発症しやすさに関係する遺伝的な要因に、さまざまな環境要因が重なって発症すると考えられています。ドパミンなどの神経伝達物質や、脳の情報処理の仕組みとの関係も研究されています。

ただし、「ドパミンが多いから起きる」といった一つの仕組みだけで、すべての症状を説明できるわけではありません。ストレスは発症や悪化に関わる場合がありますが、本人やご家族に原因を求めて責めることは適切ではありません。

統合失調症の症状

主な症状は、陽性症状、陰性症状、認知機能の障害に分けて説明されます。

ここでいう「陽性」「陰性」は、性格が明るい・暗いという意味や、病気の良し悪しを表す言葉ではありません。

症状の種類主な症状日常生活でみられる例
陽性症状幻覚、妄想誰もいないのに声が聞こえる、根拠が乏しくても監視されていると強く確信する
思考や会話のまとまりにくさ考えのつながりが不明瞭になる話が途中で飛ぶ、相手に伝わるように説明することが難しくなる
陰性症状意欲の低下、感情表現の乏しさ、会話の減少入浴や着替えに取りかかれない、人と会うことや趣味への関心が減る
認知機能の障害注意・記憶・段取りの難しさ会話についていけない、約束を忘れる、複数の作業を順番に進めにくい

すべての症状が、すべての方に現れるわけではありません。また、意欲や活動性の低下には、うつ状態、薬の副作用、睡眠の問題などが関係している場合もあります。病気そのものの症状なのか、ほかに調整できる要因があるのかを確認します。

幻聴や妄想は、本人には現実のこととして感じられる

周囲には聞こえない声でも、本人には実際に聞こえているように感じられます。「監視されている」という考えも、単なる心配ではなく、確かな出来事として受け止められる場合があります。

そのため、「気にし過ぎ」「そんなことはありえない」と説明されても、すぐには安心できません。

本人が病気だと認識しにくいこともありますが、必ずしも意地を張っているわけではありません。本人が何に困り、どのような怖さを感じているのかを理解することが、支援の出発点になります。

統合失調症の診断

診断では、症状の内容や続いている期間、生活への影響、これまでの経過を確認します。必要に応じて、ご本人の同意を得ながら、ご家族などから普段との違いを伺います。

幻聴や妄想があるからといって、必ず統合失調症とは限りません。

双極性障害や重いうつ病、薬物・医薬品の影響、せん妄、神経疾患などでも、似た症状が生じることがあります。発症年齢や身体症状に応じて、血液検査や画像検査などを検討し、ほかの原因を確認します。

血液検査や脳の画像検査だけで、統合失調症を確定できるわけではありません。 初診時には診断を確定せず、経過をみながら判断する場合もあります。

不眠や引きこもりだけで判断できるのか?

発症前に、不眠、不安、人付き合いの減少、学業や仕事の能率低下などがみられることはあります。

ただし、これらはさまざまな不調で生じる変化であり、それだけで統合失調症と判断することはできません。インターネットのチェックリストだけで結論を出さず、症状と生活の変化をまとめて評価することが必要です。

統合失調症の治療

治療では、抗精神病薬による薬物療法を基本に、心理的な支援や生活面の支援を組み合わせます。

目標は、幻聴や妄想を減らすことだけではありません。安心して眠れること、日常生活を整えること、学業や仕事、人との関わりを取り戻すことも大切な目標です。

1.薬物療法

抗精神病薬は、幻覚や妄想、考えのまとまりにくさなどを和らげるために使います。

薬は、これまでの効果、副作用、身体の病気、ご本人の希望などを踏まえて選びます。原則として一つの抗精神病薬を中心に調整し、効果が不十分な場合には、服用状況や用量、治療期間などを確認したうえで、変更を検討します。

薬を増やしたり、複数の薬を重ねたりすれば、必ずよく効くとは限りません。改善した点と困っている点を確認し、治療の負担も含めて調整します。

副作用も治療の大切な相談事項

抗精神病薬では、薬によって、眠気、体重増加、血糖・脂質の変化、手の震え、筋肉のこわばり、便秘、ホルモンへの影響などが生じる場合があります。

また、「じっと座っていられない」「体の内側から落ち着かない」といったアカシジアという副作用が、不安や病状の悪化と間違われることもあります。

副作用は我慢するしかないものではありません。症状に応じて薬の変更や用量調整を検討し、体重や血液検査などで身体の健康状態も確認します。強い落ち着かなさが出た場合は、早めに処方医へ相談してください。

持効性注射剤という選択肢

飲み忘れを減らしたい方や、毎日の服薬が負担になる方では、薬の効果が一定期間続く持効性注射剤を検討することがあります。LAIと呼ばれる治療です。

使用できる薬や投与間隔は製剤によって異なります。ご本人の希望、これまでの効果や副作用を確認し、生活に合う方法を相談します。

2.心理教育・心理社会的な支援

病気や薬について理解する「心理教育」、困りごとへの対処を考える認知行動療法、対人関係や生活技能の練習、就学・就労支援などを組み合わせます。

例えば、声が聞こえたときの対処方法を考える、疲れ過ぎない予定の組み方を練習する、仕事の負担を調整する、といった支援です。

ご家族への説明や相談も治療の一部です。利用できる支援は医療機関や地域によって異なるため、必要に応じて関係機関と連携します。

3.治療の効果が十分でない場合

適切な薬物療法を行っても症状が続く場合には、診断、服用状況、治療期間、身体の病気や物質使用の影響などを改めて確認します。

複数の抗精神病薬を十分に試しても改善が乏しい治療抵抗性の統合失調症では、クロザピンが重要な選択肢となります。

クロザピンには重い副作用への注意が必要で、国内では所定の登録・検査体制のもとで使用します。実施可能な専門医療機関で、適応と安全性を評価します。

治療に関する研究紹介

症状が落ち着いた後も、薬を続ける意味はあるのか?

Leuchtらが2012年に発表したメタ解析では、65件の試験、計6,493人のデータを用い、抗精神病薬の継続とプラセボを比較しました。

約1年時点の再発率は、次のとおりでした。

比較した治療再発した人の割合
抗精神病薬を継続した群27%
プラセボ群64%

抗精神病薬の継続には、再発を減らす効果が認められました。

ただし、これは集団の平均であり、一人ひとりの再発確率をそのまま示す数値ではありません。また、この研究だけで、生涯同じ薬を同じ量で続ける必要があると判断できるわけでもありません。

研究から読み取れるのは、症状がなくなったことと、薬が不要になったことは同じではないという点です。

抗精神病薬には「誰にでも一番よい薬」があるのか?

Huhnらが2019年に発表したネットワークメタ解析では、402件の試験、計53,463人のデータから、32種類の経口抗精神病薬を比較しています。

薬によって有効性に違いがある一方、体重増加、眠気、運動系の副作用、プロラクチンへの影響などにも違いが認められました。

そのため、薬を選ぶ際には「効き目の順位」だけを見るのではなく、その人が困っている症状や、副作用の受けやすさを考える必要があります。

なお、この研究は主に再発歴のある成人の急性期治療を対象としており、初回発症や治療抵抗性の方、長期の維持治療に、そのまま当てはめられるものではありません。

薬以外の支援を組み合わせることにも意味があるのか?

KaneらによるRAISE研究では、初回の精神病エピソードを経験した404人を対象に、包括的な早期支援プログラムと通常の地域医療を比較しました。

包括的な支援では、薬物療法に加えて、心理的な支援、家族教育、就学・就労支援などを組み合わせています。2年間の評価では、通常の地域医療と比べて、生活の質や症状、仕事・学校への参加などで良好な結果が報告されました。

ただし、米国の複数の地域施設で行われた研究であり、日本のすべての診療環境で同じ結果になるとは限りません。また、どれか一つの支援だけの効果を示す研究でもありません。

それでも、治療を薬の調整だけで完結させず、生活の回復を支えることの意義が分かる研究です。

ご家族の対応について

内容を言い争うより、つらさを受け止める

「誰かに監視されている」と話されたとき、強く否定して説得しようとすると、本人が理解されていないと感じる場合があります。

一方で、ご家族が「確かに監視されている」と同意する必要もありません。

例えば、次のように伝える方法があります。

「私には監視されているかどうかは分からないけれど、怖くて休めないのはつらいね」
「安心して眠れるように、先生に相談してみよう」

体験の内容を事実として肯定することと、その体験による苦痛に寄り添うことは、分けて考えられます。

ご家族だけで抱え込まない

意欲の低下や生活の乱れに対して、強く励ましたり叱ったりしても、本人が動けるようになるとは限りません。取り組めることを小さく分け、休養と活動のバランスを相談します。

本人が受診を望まない場合でも、ご家族が医療機関や地域の相談機関に対応を相談することはできます。本人不在での相談を受け付けているかは、各窓口に確認してください。

ご家族自身の睡眠や生活を守ることも大切です。支える役割を一人に集中させず、医療・福祉の支援を利用します。

統合失調症のその他の補足事項

薬はいつやめられるのか?

治療期間は、初回発症か再発か、これまでの経過、症状の安定期間、副作用、生活環境などによって異なります。

安定している場合に減量を検討することはありますが、自己判断で急に中止すると再発のリスクが高まります。減量する場合も、主治医と相談し、睡眠や不安、生活の変化を確認しながら慎重に進めます。

再発のサインを共有しておく

眠れなくなる、人を避ける、疑い深くなる、独り言が増えるなどが、その人にとっての悪化のサインになる場合があります。

ただし、サインには個人差があります。調子が安定している時期に、本人・ご家族・医療者で「以前はどんな変化があったか」「変化が出たらどこに相談するか」を整理しておくと、早めの対応につながります。

早急な受診が必要な場合

次のような場合には、通常の予約日を待たず、医療機関に相談してください。

  • 幻聴や強い恐怖のため、本人や周囲の安全を保てない。
  • 「死にたい」という気持ちが強い、具体的な自傷行動や準備がある。
  • 声に命令され、自分や誰かを傷つけそうになる。
  • 食事や水分が取れず、衰弱している。
  • 急に反応が乏しくなった、動かなくなった、強い混乱がある。

差し迫った危険や意識の異常がある場合は、119番などの救急対応を利用してください。安全を保てないときは、ご家族だけで制止しようとせず、支援を求めることが必要です。

統合失調症と診断されたら、働くことは難しいのか?

病名だけで、就学や就労の可能性が決まるわけではありません。症状が安定し、学業や仕事を続けている方もいます。

回復の速さや必要な支援には個人差があります。以前の生活に急いで戻すより、本人の希望を確認しながら、活動時間や負担を調整することが大切です。

症状への治療と並行して、住まい、人とのつながり、学びや仕事など、本人が大切にしたい生活を支えていきます。

受診を検討していただきたい方へ

周囲には聞こえない声が聞こえる、監視や悪意を強く感じて安心できない、考えがまとまらず生活に支障が出ているときは、精神科への相談をご検討ください。

ご本人が病名に納得できていなくても、「眠れない」「怖くて外に出られない」「仕事がうまくできない」といった困りごとから相談して構いません。

症状が強い場合や安全の確保が難しい場合には、入院設備のある精神科医療機関などでの対応が必要になることがあります。状態に合った治療環境につながることが大切です。

参考文献

  1. 日本神経精神薬理学会・日本臨床精神神経薬理学会.統合失調症薬物治療ガイドライン2022/患者と支援者のための統合失調症薬物治療ガイド2022.
  2. World Health Organization. Schizophrenia. 2025.
  3. National Institute of Mental Health. Schizophrenia. Revised 2024.
  4. NICE. Psychosis and schizophrenia in adults: prevention and management(CG178).
  5. Leucht S, et al. Antipsychotic drugs versus placebo for relapse prevention in schizophrenia: a systematic review and meta-analysis. Lancet. 2012;379:2063–2071.
  6. Huhn M, et al. Comparative efficacy and tolerability of 32 oral antipsychotics for the acute treatment of adults with multi-episode schizophrenia: a systematic review and network meta-analysis. Lancet. 2019;394:939–951.
  7. Kane JM, et al. Comprehensive Versus Usual Community Care for First-Episode Psychosis: 2-Year Outcomes From the NIMH RAISE Early Treatment Program. Am J Psychiatry. 2016;173:362–372.

情報確認日:2026年10月17日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)