解離性障害


札幌市の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。


「自分のことなのに、自分に起きている感じがしない」
「周囲の景色が夢の中のようで、現実感がない」
「ある時間の出来事だけ、どうしても思い出せない」

このような症状が続いたり、繰り返されたりする場合、解離性障害が関係していることがあります。現在は「解離症」という名称も使われています。

自分でも説明しづらく、周囲にも理解されにくい症状ですが、本人の気の持ちようだけで片付けられるものではありません。ほかの病気の可能性も確認しながら、症状と生活上の困りごとに応じて治療を進めます。

解離性障害の概要

私たちは普段、記憶や感情、身体の感覚、自分が自分であるという感覚を、ひとつながりのものとして経験しています。

「解離」とは、こうしたつながりが一時的に薄れたり、途切れたりすることをいいます。自分の身体や感情から離れたように感じる、出来事の記憶が抜ける、といった形で現れます。

解離に似た体験があるだけで、直ちに病気と診断されるわけではありません。症状が繰り返され、強い苦痛や日常生活への支障につながっているかどうかが重要です。

解離性障害の種類と主な症状

代表的なものとして、以下があります。

種類主な症状・特徴
解離性健忘自分に関する重要な出来事を、通常の物忘れでは説明できない形で思い出せなくなります。
離人感・現実感消失症自分の心や身体が自分のものではないように感じたり、周囲の世界の現実感が薄れたりします。
解離性同一症自分であるという感覚や行動のあり方に明らかな不連続が生じ、日常の出来事などについて記憶の空白を伴います。以前は「多重人格」と呼ばれていました。

解離性健忘

強いストレスを受けた出来事や、ある期間の経験などを思い出せなくなることがあります。

日常的な「うっかり忘れ」とは程度や性質が異なり、本人の意思で思い出そうとしても、記憶にアクセスできない状態です。まれに、移動した経緯を思い出せないまま、普段とは違う場所にいることもあります。

ただし、記憶の空白には、脳の病気や飲酒、薬の影響なども関係するため、症状だけで解離性健忘と判断することはできません。

離人感・現実感消失症

離人感とは、「自分を外から眺めている」「自分の声や身体なのに、自分のものではないように感じる」といった体験です。

現実感消失では、「周囲に薄い膜がかかっている」「夢の中のように感じる」といった感覚が生じます。

通常は、「実際に世界が変わった」という確信ではなく、「現実だと分かっているのに、現実らしく感じられない」という体験です。

解離性同一症

自分であるという感覚や行動のあり方が切り替わり、その間の出来事を思い出せないなどの症状がみられます。

単に気分によって態度が変わることや、相手によって振る舞いを変えることとは異なります。また、解離性障害のすべてに、このような症状があるわけではありません。

解離性障害の原因

解離性障害には、強いストレスや心的外傷(トラウマ)が関係することがあります。事故や災害、暴力、虐待など、圧倒されるような体験の際に、その出来事や感情から距離を取る反応として、解離が生じると考えられています。

ただし、背景は一人ひとり異なり、診察の時点では、はっきりしたきっかけが分からない場合もあります。

症状があるからといって、特定の過去の体験が必ずあったと決めつけることはできません。原因を急いで探すより、まず現在の安全と生活の安定を整えることが大切です。

解離性障害の診断

診察では、症状の内容、始まった時期、起こる頻度、記憶が抜ける範囲、生活への影響などを確認します。睡眠、飲酒、服用している薬、ストレスの状況についても伺います。

本人の同意が得られる場合には、ご家族などから、症状が起きていたときの様子を聞くことも役立ちます。

また、頭部外傷や脳の病気、強い睡眠不足、薬物・アルコールの影響などでも似た症状が起こるため、必要に応じて身体の診察や検査を行います。

検査で異常が見つからないことだけを理由に、解離性障害と診断するわけではありません。 症状の特徴と経過を含めて判断します。

解離性障害の治療

治療では、症状を理解し、安全な生活を取り戻しながら、ストレスへの対処を身につけていきます。

① 安全と生活の安定を整える

まず、現在も強い負担や危険にさらされていないかを確認します。睡眠や生活リズムを整えることに加え、必要に応じて仕事・学校・対人関係などの負担を調整します。

症状をすぐに説明できなくても構いません。「どんなときに困るか」「生活に何が起きているか」から整理していきます。

② 精神療法・心理療法

治療の中心は、精神療法・心理療法です。

症状の起こり方を理解し、負担の大きい状況への対処や、解離が起きたときの対応を相談します。治療者との信頼関係を築き、安心して取り組めるペースで進めることが大切です。

過去のつらい体験を扱う場合も、最初から詳しく話す必要はありません。現在の安定と対処する力を確認したうえで、必要性を相談します。無理に記憶を取り戻すことを、治療の目標にするわけではありません。

③ 薬物療法

解離症状そのものに対する、確立した特効薬はありません。

一方、うつ状態、不安、不眠などを伴う場合には、それらを和らげる目的で薬を使用することがあります。薬の必要性や効果は、症状ごとに評価します。

専門的な心理療法が必要な場合には、対応できる医療機関や支援先との連携を検討します。

ご家族や周囲の方へ

本人の体験は、外からは分かりにくいことがあります。記憶がないことを責めたり、「考え過ぎ」と片付けたりせず、困っていることに耳を傾けてください。

過去の出来事を無理に聞き出すより、現在の生活で何に困っているか、どのような助けが必要かを確認しましょう。症状が起きた際の対応について、本人と医療者を交えて相談しておくことも役立ちます。

支える方自身の負担が大きい場合も、医療機関へ相談してください。

解離性障害の経過と受診について

症状が比較的短期間で落ち着く方もいれば、長く続き、継続的な治療や支援が必要になる方もいます。経過には個人差がありますが、治療によって症状や生活上の困難の改善を目指せます。

記憶の空白や現実感の乏しさが繰り返され、仕事、学校、人間関係などに影響している場合は、精神科・心療内科にご相談ください。

なお、突然の記憶障害や意識の変化、けいれんなどが起きた場合は、解離と自己判断せず、速やかに身体の病気を確認する必要があります。意識が戻らないなど緊急性がある場合は、119番を利用してください。

自分の状態をうまく言葉にできなくても、受診して構いません。話せることから、少しずつ整理していきましょう。

参考文献・参考情報

  • American Psychiatric Association:What Are Dissociative Disorders?
  • NHS:Dissociative disorders
  • Mayo Clinic:Dissociative disorders — Diagnosis and treatment

情報確認日:2026年10月17日

執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)