片頭痛

札幌市西区の精神科・心療内科、ことのはメンタルクリニックです。
「頭痛が始まると、仕事や家事が手につかない」
「頭痛だけでなく、吐き気や光のまぶしさもつらい」
「市販薬でしのいでいるけれど、飲む日が増えてきた」
このような症状がある場合、片頭痛の可能性があります。
片頭痛は、日常生活に大きな支障をきたすことのある病気です。しかし、発作時の薬を適切に使い、必要に応じて予防治療を組み合わせることで、負担を軽くできる可能性があります。
この記事では、片頭痛の特徴、診断の考え方、治療の選択肢について解説します。
片頭痛の症状
片頭痛では、数時間から数日にわたる頭痛が繰り返し起こります。成人では、治療しない場合や治療が十分に効かなかった場合、頭痛は通常4〜72時間続きます。
典型的には、次のような特徴があります。
| 特徴 | 具体的な症状 |
|---|---|
| 痛む場所 | 頭の片側に起こることが多いものの、両側が痛む場合もあります |
| 痛み方 | ズキズキと脈打つような痛みが典型ですが、脈打たないこともあります |
| 痛みの強さ | 仕事、家事、学校生活などに支障が出る程度の痛み |
| 動作との関係 | 歩行や階段の上り下りなどで悪化し、動くのを避けたくなります |
| 吐き気 | 気持ち悪さや嘔吐を伴うことがあります |
| 感覚の変化 | 普段は気にならない光や音が、つらく感じられます |
「片側が痛くない」「ズキズキしない」という理由だけでは、片頭痛を否定できません。 痛む場所だけでなく、動作による悪化や、吐き気・光・音への過敏さを合わせて判断します。
片頭痛の前兆とは?
片頭痛のある方の一部では、頭痛に先立って「前兆」が現れます。代表的なのは、視野にギザギザした光が見えたり、見えにくい部分が徐々に広がったりする視覚症状です。
感覚の異常や言葉の出にくさが現れることもあります。典型的な前兆は徐々に進行し、個々の症状は通常5〜60分でおさまります。前兆だけで頭痛を伴わない場合もあります。
ただし、初めて起きた麻痺や言語障害、突然の視力低下などを、自分で片頭痛の前兆と判断してはいけません。 脳卒中などとの区別が必要です。突然始まった症状や、普段と異なる症状では、速やかに医療機関を受診してください。
先に知っておきたい、危険な頭痛のサイン
頭痛のなかには、くも膜下出血や感染症など、早急な対応が必要な病気によるものもあります。
次のような場合は、いつもの片頭痛として様子を見ず、受診してください。
- 突然始まり、短時間でピークに達する激しい頭痛
- 手足の麻痺、ろれつの回りにくさ、意識の異常を伴う頭痛
- 発熱や首の強い硬さを伴う頭痛
- 頭をぶつけた後に悪化する頭痛
- 妊娠中・産後に新しく起きた強い頭痛
- これまでとは明らかに性質が違う、または徐々に悪化する頭痛
突然の激痛や神経症状がある場合は、救急受診が必要です。片頭痛と診断されたことがある方でも、新しい頭痛がすべて片頭痛とは限りません。
片頭痛はどのように診断するか?
基本は、症状の経過を詳しく聞くこと
片頭痛の診断では、頭痛の続く時間、繰り返し方、痛みの特徴、随伴症状などを確認します。
国際頭痛分類では、「前兆のない片頭痛」は、おおむね以下の条件を組み合わせて診断します。
- 条件を満たす頭痛発作が5回以上ある
- 未治療または治療が無効の場合、4〜72時間続く
- 「片側性」「拍動性」「中等度〜重度」「日常的な動作で悪化する、または動作を避ける」のうち2つ以上がある
- 「吐き気・嘔吐」または「光過敏と音過敏」がある
- ほかの病気では、より適切に説明できない
すべての条件がそろわなくても、片頭痛が疑われる場合はあります。チェック項目だけで自己診断せず、診察で確認することが大切です。
CTやMRIは何のために行うのか?
CTやMRIで、片頭痛そのものを直接確認することは通常できません。一方、脳出血や脳腫瘍など、別の原因を調べるためには重要な検査です。
症状が典型的で、神経学的な診察に異常がなければ、毎回画像検査が必要なわけではありません。新しく始まった頭痛、症状の変化、診察所見などから、検査の必要性を判断します。
片頭痛の治療は「発作時の治療」と「予防治療」
片頭痛の治療には、起きた発作を抑える急性期治療と、発作の頻度や負担を減らす予防治療があります。
全員が予防薬から始めるわけではありません。発作の頻度、生活への支障、発作時の薬の効き方などに応じて、組み合わせを考えます。
発作時の治療
急性期治療では、痛みを軽くするだけでなく、できるだけ早く普段の生活に戻れることを目指します。
アセトアミノフェンやNSAIDsのほか、片頭痛に対する治療薬としてトリプタンが用いられます。吐き気が強い場合には、制吐薬の併用や剤形の変更も検討します。
トリプタンは、一般に頭痛が始まってから、痛みがまだ軽いうちに服用するほうが効果を得やすい薬です。前兆のある方でも、通常は前兆だけの段階ではなく、頭痛が始まってから使います。心血管疾患や脳血管疾患など、使用できない条件があるため、持病や併用薬の確認が必要です。
現在は、ラスミジタンや、CGRP受容体拮抗薬のリメゲパントなど、異なる仕組みの薬も選択肢になっています。
ラスミジタンでは、めまいや眠気に注意が必要です。服用後は少なくとも8時間、自動車の運転などを避ける必要があります。リメゲパントは、日本では片頭痛発作の急性期治療と発症抑制の両方に承認されています。いずれも、生活状況や併用薬を踏まえて選びます。
薬が効きにくい場合も、すぐに治療を諦める必要はありません。服用のタイミング、薬の種類、剤形、吐き気への対策を見直すことで、改善する場合があります。
予防治療を考える目安
予防治療は、頭痛が毎日ある方だけの治療ではありません。
発作が月に2回以上ある場合や、回数が少なくても生活への支障が大きい場合、発作時の薬が十分に効かない場合などに検討します。薬を使用する日が増えていることも、治療を見直すきっかけになります。
予防薬は、頭痛の頻度だけでなく、持病、副作用、妊娠の可能性などを考慮して選びます。代表的な内服薬には、ロメリジン、プロプラノロール、アミトリプチリン、バルプロ酸などがあります。
特にバルプロ酸は、胎児への影響があるため、片頭痛予防の目的では妊婦・妊娠している可能性のある方には使用できません。体重への影響だけで予防薬を選ばないことが重要です。
内服予防薬は、少量から調整し、適切な用量で一定期間使用して効果を判断します。頭痛日数だけでなく、寝込む時間や仕事への影響、発作時の薬を使う日数も評価します。
CGRP関連薬で広がった予防治療の選択肢
片頭痛には、CGRPという神経ペプチドが関与しています。この働きを抑える治療として、ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブなどの注射薬が使用されています。
従来の予防薬で十分な効果が得られない方や、副作用で継続しにくい方にとって、有力な選択肢です。適応や保険診療上の条件、費用、投与方法を確認したうえで導入します。
また、飲み薬のCGRP受容体拮抗薬も登場しています。例えばリメゲパントは、予防目的では隔日投与する薬です。発作時の使い方とは異なるため、処方された方法に従って使用します。
研究紹介:効果だけでなく「続けやすさ」も大切
2022年に報告されたHER-MES試験では、片頭痛患者777人を対象に、エレヌマブとトピラマートを24週間比較しました。
月間片頭痛日数が50%以上減少した割合は、エレヌマブ群55.4%、トピラマート群31.2%でした。一方、副作用による中止は、それぞれ10.6%、38.9%でした。
この結果からは、予防治療では薬の効果に加えて、副作用を許容し、継続できるかどうかも治療成績に影響することが読み取れます。
ただし、海外で行われた特定の薬同士の比較であり、すべての患者さんで注射薬が最適だという意味ではありません。国内での適応や費用も含めて判断します。
頭痛薬を飲む日が増えてきたら
頭痛が多くなると、薬を飲む日も増えます。その結果、薬の使用過多が頭痛の慢性化に関わる場合があります。これを「薬剤の使用過多による頭痛」と呼びます。
診断では、もともと頭痛のある方に月15日以上の頭痛があり、薬の種類ごとの基準を超える使用が3か月を超えて続いていることなどを確認します。使用日数の基準は、トリプタンや複合鎮痛薬などでは月10日以上、アセトアミノフェンやNSAIDsなどでは月15日以上です。
ただし、この日数は「ここまでは必ず安全」という境界ではありません。薬を飲む回数より、飲んだ日数を記録することが大切です。
痛みを我慢し続ける必要はありません。使用日数が増えたときは、発作時の薬を制限するだけでなく、予防治療も含めて治療全体を見直します。
慢性片頭痛とは?
頭痛が月15日以上あり、そのうち月8日以上に片頭痛の特徴がみられる状態が、3か月を超えて続く場合は、慢性片頭痛を考えます。
毎回すべての頭痛が強いとは限らず、軽い頭痛が続くなかに強い発作が混じることもあります。「寝込むほどではない日」も含めて、頭痛のあった日を記録すると診断や治療に役立ちます。
日常生活でできる対策
生活の工夫は、薬物療法と合わせて行う対策です。完璧に生活を管理しようとする必要はありません。
まずは、起床時刻を大きくずらさない、食事を抜かない、脱水を避けるなど、続けやすいところから整えていきましょう。カフェインは多量摂取や急な中断で頭痛に関わることがあるため、摂取量にも目を向けます。
発作時は、暗く静かな場所で休むと楽になることがあります。冷やして心地よい場合は、タオルなどを介して頭部を冷やしても構いません。
食べ物や天候などの誘因には個人差があります。多数の食品を一律に禁止するより、頭痛日記で自分の傾向を確認するほうが実用的です。
頭痛日記には、次の内容を簡単に残しておくと役立ちます。
- 頭痛のあった日と、生活への支障
- 吐き気、光や音への過敏さ、前兆の有無
- 使用した薬と、その効き方
- 月経や睡眠との関係
片頭痛と、女性ホルモン・こころの不調
片頭痛は月経に関連して起こることがあり、月経周期を記録すると治療計画に役立ちます。
また、前兆のある片頭痛では、エストロゲンを含む低用量ピルなどの使用に注意が必要です。避妊や月経症状の治療を受けている方は、前兆の有無を処方医に伝えてください。ホルモン製剤は種類によって扱いが異なるため、一括りにせず確認します。
片頭痛には、不眠、不安、抑うつなどが併存することもあります。ただし、ストレスとの関連があるからといって、頭痛を「気のせい」と考えるのは適切ではありません。頭痛への治療と、睡眠やこころの不調への対応を並行して考えます。
頭痛を繰り返すときは
「市販薬で何とかなるから」と、頭痛による生活の制限を当たり前にしてしまっている方は少なくありません。
診察では、痛みの強さだけでなく、頭痛のある日数、薬を使用する日数、仕事や家事への影響をお聞かせください。
片頭痛の治療では、発作への対処と予防の両方から、生活への支障を減らす方法を考えていきます。頭痛の性質や診察所見によっては、画像検査のできる医療機関や頭痛専門医での評価が必要になる場合もあります。
参考文献・資料
- 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会監修.頭痛の診療ガイドライン2021
- International Headache Society. 国際頭痛分類第3版(ICHD-3)
- 日本頭痛学会.CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)
- Reuter U, et al. Erenumab versus topiramate for the prevention of migraine: a randomised, double-blind, active-controlled phase 4 trial. Cephalalgia. 2022;42:108–118.
- PMDA.ナルティークOD錠75mg 医療用医薬品情報
※薬剤の選択や使用方法は、持病、併用薬、妊娠・授乳の状況などによって異なります。
情報確認日:2026年10月17日
執筆及び医学監修:高橋 和政(ことのはメンタルクリニック院長)